韓国で「アナキ法」といわれる育児方法が、深刻な社会問題になっている。
「薬を使わず子育てする」という韓国語の略称である「アナキ」は、その言葉通り、医師や薬に頼らず、子どもの自然治癒力を高めるためオーガニックなものだけを使う、いわば自然療法だ。
同名の大型ネットコミュニティには約6万人の会員がおり、「アナキ族」と呼ばれる彼らは、自分たちで考案した自然療法やその実践結果をシェアしている。
ところが、コミュニティの掲示板には、治療どころか虐待をしているとしか思えない事案がびっしり書き込まれていた。そのアナキ法をいくつか挙げてみよう。
「高熱を出したときは浣腸をする」
「乳液、化粧水、ボディソープなど、子ども向けボディケア用品を一切使わない」
「アトピー性皮膚炎の場合、しょうゆの水割りを塗る」
「やけどを負った場合、40度のお湯に40分間浸かるか、太陽を浴びる」
「下痢などのおなかのトラブルには、炭の粉を食べさせる」
「ワクチン接種は危険、絶対に避けるべし」
「ウイルス性肺炎になったら、蒸し風呂に入らせる」
どれもこれも、真偽が怪しいものばかり。
ネット民からは「育児にかこつけた虐待だろ」「もはやエセ宗教並みのバカバカしさ」「無知な人間が信念を持つほど怖いものはないな」「あんなバカ親のもとで育つ子どもたちが、かわいそうすぎる」といった批判が後を絶たない。
1,000人以上の死亡者を出した「殺人加湿器事件」をきっかけに、化学物質に対する不信感が募りに募っている韓国のママたち。
アナキ法を信じたくなるのも無理はないが、問題はアナキ法やその副作用によって苦しむ子どもが増えていることだ。
とある元アナキ族は、「高熱を出した娘にアナキ法を実行した結果、肺炎などの合併症を起こして入院せざるを得なかった」という。また、日本脳炎、DTaP(破傷風・ジフテリア・百日咳)、MMR(はしか・流行性耳下腺炎・風疹)などの必須予防接種すら受けずに小学校に入学する子どもも増えており、感染症が集団発生する可能性も高まっているそうだ。
まるでヒッピーを彷彿とさせるアナキ族。“自然なもの”だけで生きていくというのは、そう簡単なことではないが…。
前へ
次へ