旧統一教会マネーに染まった与党大物、会期中逮捕の危機 韓国政治の“政教癒着”の闇

2025年09月02日 政治 #時事ジャーナル
このエントリーをはてなブックマークに追加

これまで5度当選し、国会で院内代表を務めたこともある与党「国民の力」の重鎮クォン・ソンドン議員が、「会期中に逮捕される国会議員」として記録される危機に直面している。

【写真】旧統一教会と前大統領夫人のつながりとは?

現職議員が会期中に拘束されるには、国会本会議での逮捕同意案の表決を経なければならない。特別検察官(特検)が法務部に請求し、法務部が大統領の裁可を経て国会に送付して表決を求めるという手順だ。可決されれば拘束審査にかけられる。与党が過半数を占め、クォン議員本人も不逮捕特権を放棄すると公言しているため、逮捕令状審査は事実上確定的とみられている。

「いまさら驚くことでは…」

クォン議員をめぐっては、尹錫悦前大統領夫人キム・ゴンヒ氏に関する特検チームが、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)世界本部の元総責任者ユン・ヨンホ氏から、教団資金1億~2億ウォン(約1000万~2000万円)を現金で受け取ったとの供述を確保したとされる。このため世論の関心は旧統一教会と国民の力の癒着関係に集中している。

キム・ゴンヒ氏
(写真=共同取材団)キム・ゴンヒ氏

もっとも、政界内外では「いまさら驚くことではない」との反応も出ている。いわゆる「政教癒着」は過去から繰り返されてきたためだ。旧統一教会に限らず、キリスト教や仏教など他の有力宗教との関係も存在するとの声があり、捜査当局による広範な調査を求める指摘もある。

与党関係者は「公にはならないだろうが、クォン議員にとって自分だけが標的となるのは不本意だろう。旧統一教会が彼ひとりだけにロビー活動をしたとは考えにくい」と語り、「特検が教団幹部の通話記録を調べれば、まだ名の出ていない野党有力者のリストも浮かぶはずだ」と付け加えた。

野党「共に民主党」も例外ではない。政権が交代すると宗教界は素早く新権力に接近するからだ。宗教団体にとっては、有力政党の庇護を得れば税制上の優遇や建築・不動産開発の便宜を受けられる。さらに文化財保存や宗教行事、海外宣教などの名目で補助金を得ることも可能だ。議員にとっては、宗教勢力の組織票が頼れる後ろ盾となる。

実際、「国民の力」は第20代大統領選挙でチョン・グァンフン牧師を中心とするキリスト教界の支援を受け選挙活動を展開。李明博元大統領も大統領選で保守系プロテスタントの組織的支持を得て、宗教を政治基盤として活用した。

国会事情に詳しい関係者は「新人政治家が最初に訪れるのは宗教界だ。『票』になるからだ」と指摘し、「政教癒着の鎖を断つには、クォン議員一人を捜査するだけでは不十分だ。宗教界の組織的支援に依存する古い慣行を、この機会に断ち切ることが重要だ」と強調した。

金と票

クォン・ソンドン議員
(写真=クォン・ソンドン議員Facebook)

宗教界と政治家の癒着が断ち切れない理由のひとつは、宗教団体の要望に応えることで政治資金を得られる点にある。国会秘書経験者は「民主党の論評や幹部発言を見ると、クォン議員は攻撃しても旧統一教会そのものへの批判は少ない。彼ら自身も宗教界とのつながりを抱えているからだ」と話し、「一部では特検が“国民の力ゲート”に拡大するとの観測もあるが、民主党にも不安を抱える議員は少なくない」と述べた。

現在、特検の焦点は旧統一教会とクォン議員ら特定人物に当てられている。こうした状況に、他の宗教勢力が万一の波及に備えているとの見方もある。市民社会が政教癒着を持続的に監視する必要性が指摘されるのも、このためだ。

全北大学のソル・ドンフン教授は「フランスは憲法的理念に近いほど宗教と政治の分離を強調している。アメリカもまた、宗教界が現実政治に介入しない場合に限り非課税としている」とし、「投票呼びかけのために宗教界を訪れることは可能だが、特定宗教が特定政治家に票を集中させる行為は国民感情を逆なでするものだと認識すべきだ」と警告した。

(記事提供=時事ジャーナル)

旧統一教会の“遠征賭博資金”を追及し始めた韓国

旧統一教会にまで波及 ネックレス供与自白で韓国前ファーストレディ逮捕

統一教会との関係…韓国の前大統領夫人が出頭 現場ではセクハラまがいの罵倒も

前へ

1 / 1

次へ

RELATION関連記事

デイリーランキングRANKING

世論調査Public Opinion

注目リサーチFeatured Research