尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の妻であるキム・ゴンヒ氏に関連する事件を捜査中のミン・ジュンギ特検チームが、「コンジン法師」ことチョン・ソンベ氏の事件に関連して全面的な捜査に乗り出した。
特検チームは、旧・統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の元高位幹部による請託疑惑に関連し、統一教会ソウル本部に対する2回目の家宅捜索を行った。
特検チームは統一教会内部の資金の流れを調べており、教団の事業に関連して企画財政部や輸出入銀行などに対する家宅捜索も実施した。
7月21日、法曹界によると、特検チームはこの日午前、ソウル龍山(ヨンサン)区にある旧統一教会ソウル本部に捜査官を派遣し、令状を執行した。7月18日にソウル本部をはじめ、加平(カピョン)郡・雪岳面にある統一教会本部や、事業体の資金を管理する統一維持財団など、各種教団施設に対して全面的な家宅捜索を行ってからわずか3日後のことだ。
旧統一教会の世界本部長(2021~23年)を務めたユン氏は、2022年の尹錫悦政権の発足前後にチョン・ソンベ氏を介してキム・ゴンヒ氏に高級バッグやネックレスなどを渡したとされている。
当初、事件を扱っていたソウル南部地検の捜査チームは、教団のカンボジア・メコン川開発事業支援、YTN買収、国連第5事務局の韓国誘致、大統領就任式への招待などを尹政権に請託する目的で、ユン氏がキム・ゴンヒ氏側に高額の金品を渡したと判断した。
事件を引き継いだ特検チームは、教団に対する強制捜査の過程で、2021~2023年の3年間にわたる統一教会の会計資料を確保した。これを受け、内部資金の流れなどに集中的に注目していると見られている。
ユン氏がチョン・ソンベ氏の助けを得て、韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁の遠征賭博疑惑など教団事件に対処していたという趣旨の録音記録も調査している模様だ。特に教団関連事件では、クォン・ソンドン「国民の力」議員など、一部の「尹錫悦前大統領の核心関係者」である政治家も捜査線上に浮上している。
なお、クォン・ソンドン議員は教団との関係を否定している。
ソウル南部地検の捜査チームは、これに先立ち、教団関係者などに対する調査を行っていた。こうした経緯から、特検チームは最近確保した物証や追加調査をもとに、チョン・ソンベ氏および教団側による請託疑惑の全容把握に乗り出すと見られている。
これに関連して特検チームは、教団のカンボジア経済協力基金に関係する機関および企業を対象に強制捜査も開始した。
捜査員らはこの日、教団に対する2度目の家宅捜索と同時に、ソウル永登浦(ヨンドゥンポ)区にある輸出入銀行本店、江東(カンドン)区のヒリム総合建築事務所などでPC内のファイルなどを確保した。政府世宗庁舎にある企画財政部開発金融局、予算室も家宅捜索の対象に含まれた。
これらの機関に対しては、資料押収令状の形式を整えつつ、実際には任意提出という形で資料を確保したと伝えられている。
ユン氏がキム・ゴンヒ氏に贈り物を渡したとされる時期にあたる2022年6月、尹錫悦政権は5年間のカンボジアに対する対外経済協力基金(EDCF)借款支援限度額を、それまでの7億ドル(約1034億円)から15億ドル(約2217億円)へと拡大したことが判明した。また、尹前大統領夫妻は2022年11月にカンボジアを訪問している。
特検チームは押収物を分析し、カンボジアに対するEDCF借款支援限度が引き上げられた経緯などを調べる方針だ。
ユン氏の「上層部」にあたる韓鶴子総裁や、彼女の秘書室長であるチョン氏らも捜査線上に浮上している。教団側はチョン・ソンベ氏らによる請託疑惑に関連して、「ユン氏の個人的な決定」であり、教団とは関係がないと線を引いている。
(記事提供=時事ジャーナル)
■『週刊文春』が報じた旧統一教会の“遠征賭博資金”を追及し始めた韓国検察
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