Kリーグ1(1部)第15節終了時点(5月29日)で、天野は13試合出場6得点1アシストを記録。同じく今季から蔚山現代に加わったレオナルド(13試合7得点2アシスト)には及ばないが、マン・オブ・ザ・マッチ2回、週間ベストイレブン2回、2月の月間ベストゴールにも輝いている。
キム記者は蔚山現代の担当記者としてそれらの試合を見守ってきただけに、天野への称賛を惜しまない。
「日本人選手らしく、天野は卓越したテクニックや正確無比なパス、鋭いキック力を持ち合わせている。オン・ザ・ボールの状況はもちろん、オフ・ザ・ボールの状況でも圧巻の存在感で、最前線に2列目、サイドとピッチを自由に行き来しながら、蔚山現代の攻撃をリードしている。身体のバランスにも優れ、Jリーグよりも比較的フィジカルコンタクトの激しいKリーグのDF相手にも賢く勝ち抜いている。現時点までのKリーグ1において、最も華々しい活躍を見せる選手と言っても過言ではないですよ」(キム・ヨンイル記者)
文字通り韓国記者も手放しで大絶賛していたのだが、当の本人である天野は自身に寄せられる賞賛の声に、浮かれることも浸ることもない。先日には自身のツイッターアカウント(@Amano719)で「もっとできるはず」とつぶやいていた。
今年4月、はるばる韓国に飛んで蔚山で直接会ってインタビューしたときもそうだった。
「結果だけ見れば悪くないスタートかなと思われますが、個人的にはプレーの内容には満足できていない。もっと圧倒できると思っていますし、自分はKリーグでは外国人選手として結果と内容の両方を問われていると思うので、もっとそういった部分を見せていかなければいけないと思っています」と淡々と語っていたほどだ。
日本では外国人選手のことを“助っ人”と呼び変えるが、韓国では「ヨンビョン(傭兵)」とも言う。それだけ求められる結果と見返りが多く、その期待に応え存在感を示さなければならない。天野はそれを強く自覚しているようでもあった。
それにシーズンはまだ序盤戦を終えたばかり。今季のKリーグは10月30日の最終ラウンドまで全38節が行われる長丁場で、夏場を迎えるとハードな過密日程が続く。
蔚山現代はアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)グループステージ敗退に終わったため、リーグ戦に専念できるが、蔚山現代は万年2位に甘んじてきただけに、もはや言い訳が許されない状況でもある。
厳しい夏場を乗り越えて蔚山現代に優勝をもたらしたとき、天野は正真正銘の「今季Kリーグ最高の新戦力にして最高のヨンビョン」と評価されるだろう。また、日本人Kリーガーとして初めて年間ベストイレブンや年間MVPといった個人タイトルに輝くことになれば、韓国だけではなく日本でも大きなスポットライトを浴びるはずだ。
6月17日からシーズンが再開されたKリーグ。天野の快進撃が続くことを期待したい。
文=慎 武宏
*この原稿はヤフーニュース個人に掲載した記事を加筆・修正したものです。