そんなチームが今季は開幕から最後まで首位を守り続け、追いすがる王者・全北現代の追撃をかわし、最終節を待たずして優勝を決めたのだが(22勝10分け5敗の勝ち点76)、特筆すべきは蔚山現代には元Jリーガーなど「日本サッカー経験者」が多いことだ。
ガイナーレ鳥取、アルビレックス新潟、浦和レッズに所属したブラジル人FWレオナルドをはじめ、元横浜FMのFWユン・イルロク、元アビスパ福岡のMFウォン・ドゥジェ、元セレッソ大阪のMFキム・ソンジュン、元サガン鳥栖、鹿島アントラーズのDFチョン・スンヒョン、元新潟のDFイ・ミョンジェ、元FC東京、大宮アルディージャ、ガンバ大阪のDFキム・ヨングォン、元大宮のイ・ホが所属。Jリーグでプレーした選手が多いのだ。
さらには昨季までサンフレッチェ広島のフィジカルコーチを務めた池田誠剛氏が首席コーチを務めており、JFLで選手生活を送りジェフ千葉の強化部や山梨学院大学コーチ歴もある在日コリアンの趙光洙(チョ・グァンス)がアシスタントコーチを務めている。
監督はホン・ミョンボ。現役時代はベルマーレ平塚、柏レイソルで活躍し、韓国代表として4度のワールドカップに出場。2002年大会ではキャプテンを務め、韓国のベスト4進出に大貢献した。
指導者としても2012年ロンドン五輪で韓国サッカー初の銅メダルをもたらし、2014年ブラジル・ワールドカップでも采配を振るった“韓国サッカー界のカリスマ”だ。
そのホン・ミョンボ監督が直接獲得に動き、今季から蔚山の一員になったのが天野純である。
横浜F・マリノスでエースナンバーの背番号10を背負い、日本代表にも選出経験がある天野が今季から蔚山でプレーしていることはこれまでも何度が紹介してきたが、その後も安定した活躍を披露。
7月にはソン・フンミン擁するトッテナム対チームKリーグ(Kリーグ選抜)のスペシャルマッチのメンバーに選ばれ、試合では直接FKも決めて大きな話題を集めた。
その後もコンスタントに活躍していたが、10月1日の仁川(インチョン)ユナイテッド戦で相手選手とボールを争う過程で犯したファウルが問題視され、3試合出場停止に。蔚山が優勝を決めた16日の江原(カンウォン)FC戦も出場できなかった。
だが、チームが優勝を決めた歓喜の輪の中にはしっかりと天野の姿を確認できた。トレーニングウェアながらチームメイトたちとともにホン・ミョンボ監督を胴上げする姿は嬉しそうだった。
直近3試合にこそ出場できなかったが、現在までリーグ戦で29試合9ゴール1アシストを記録するなど、天野は蔚山現代の攻撃の要として活躍した。間違いなく蔚山17年ぶりの優勝に欠かせない存在だった。
それだけに、10月23日に行われる第38節(=最終節)の済州(チェジュ)ユナイテッド戦では、有終の美を飾ることを期待したいところだ。
先日発表されたKリーグ年間ベストイレブンの最終候補から外れてしまったとはいえ、Kリーグ1年目でのシーズン通算二桁得点達成を期待したい。
文=慎 武宏
*この原稿はヤフーニュース個人に掲載した記事を加筆・修正したものです。