先月23日、東京ドームでイベントが開催された。読売ジャイアンツのファンのためのフェスタだ。
現役・OBのスター選手が勢ぞろいし、球場は熱気に満ちていたが、イベント終了後に“打ち上げ”のような企画が用意されていた。「ジャイアンツファンフェスタ“延長戦” ~2002年優勝メンバー同窓会~」というコーナーがそれだ。
参加メンバーは豪華そのもの。上原浩治、松井秀喜、清原和博、工藤公康、高橋由伸、仁志敏久、清水隆行、元木大介…錚々たる顔ぶれが並んだ。
しばらく思い出話に花が咲き、笑い声が響く。そんななか、突然の質問が投げかけられた。映像出演した高橋尚成氏からの“素朴な疑問”だった。これに『OSEN』が「“コーチ”イ・スンヨプが就任する前に、阿部監督を揺さぶる巨人OBたち」と題し、大きな注目を寄せた。
「松井さん、いつユニホームを着て、監督をやるんですか?」。高橋氏の“ど真ん中”への直球に会場の空気が一変したが、松井氏は戸惑った表情を浮かべ、慌てて言葉を濁す。
「今日はそういう会じゃない。あくまでも今のジャイアンツ、阿部慎之助をみんなで応援するということだ」。阿部監督を立てた松井氏。現役時代ともにプレーした先輩だからこその道理だ。ただ、否定はできない。全員が気になっている話題だからだ。現地の出席者たちからも言葉が飛ぶ。
「いつかはやってほしいなと思う」(工藤)、「これだけたくさんのファンがいる。ファンの気持ちが一つあると思う。(自分も)見てみたいなと思う」(清原)。会場の空気が一気に“妙”なムードへ変わった瞬間だった。
“松井秀喜監督待望論”は昨日今日に始まった話ではない。ファンの頭から長年離れないテーマだ。しかし、公の場で、それも大勢のファンの前で触れるにはセンシティブすぎる話題だった。松井氏は直接的な回答を避け、慎重な言葉選びでなんとかその場を収めた。
今年8月、巨人は熾烈な順位争いの最中だった。しかし、だんだんと頂点が遠ざかった。首位・阪神タイガースの勢いは止まらず、巨人の逆転優勝は難しくなった。むしろ3位転落の危機が迫り、最終的には3位でシーズンを終えた。
そこで囁かれたのが“責任論”だ。「阿部監督では難しいのでは」という見方である。
阿部慎之助監督は就任2年目。1年目(2024年)はリーグ優勝を果たしたが、ポストシーズンでは3位の横浜DeNAベイスターズに敗れた。今年は3位に後退した。
監督交代論を勢いづかせた理由のひとつが、有力な後任候補の存在――松井氏だ。人気と実績を兼ね備えたスターOB。いつ監督に就任しても不思議ではない。
決定的な出来事もあった。長嶋茂雄さんの訃報。球団の象徴ともいえる人物だ。追悼の中で語られたのは、「いつかは松井にチームを託してほしい」という故人が残した言葉だった。
ここから、“阿部解任→松井就任”というシナリオがささやかれ始めた。
しかし、現実はそうならなかった。首脳陣は阿部監督続投を決断。就任2年目での交代は、悠久の球団の伝統に反する。そのような判断だと解釈される。
球団の歴史を振り返っても、巨人の監督人事は慎重だ。シーズン途中の交代はほとんどない。大半が任期を全うし、長期政権の例も少なくない。水原茂監督は11年、川上哲治監督は14年、長嶋茂雄監督は15年、原辰徳監督は17年だ。
とにもかくにも、阿部監督の続投は確定した。3年目のシーズンに向けて補強も進んでいる。コーチ陣の構成も変わった。
特に注目を集めたのが打撃部門だ。元韓国代表で球団OBのイ・スンヨプ氏を一軍コーチに招聘したのだ。大胆な人事だった。
プレッシャーもある。阿部監督のリーダーシップに対する不安が現在も残っていることだ。阿部監督の位置付けは盤石とはいえず、ファンの疑念を完全には払拭できていない。
この状況では、“松井監督待望論”は今後もたびたび表面化するだろう。彼の監督就任を求める声は、いつでも噴き上がる可能性がある。
松井氏本人も完全否定していない。過去に「ジャイアンツの未来に自分自身が関っても、不思議ではない」と語ったことがある。
イ・スンヨプ氏にとっても新たなチャンスだ。指導者として初めて“一軍打撃コーチ”という大役を務める。しかも名門・巨人だ。成功すればキャリアの大きな財産になる。
すなわち、阿部監督とイ・スンヨプ氏は「運命共同体」になったと言っても過言ではない。阿部監督が成果を残せば、それがイ・スンヨプ氏の成功にも繋がる。逆に阿部監督が結果を残せなければ、イ・スンヨプ氏の評価も上がらない。
揺らぎ続ける“盟友”のリーダーシップが、イ・スンヨプ氏の指導者キャリアのカギを握っている。
(記事提供=OSEN)
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