日本も無関係ではない…大学生死亡で再び波紋、“カンボジア犯罪”の深刻化に苦慮する韓国

2025年10月15日 社会
このエントリーをはてなブックマークに追加

カンボジアの“犯罪団地”が、ある韓国人大学生の死亡をきっかけに再び注目を集めている。

「ヤミバイト」「タチンボ」…韓国でも存在感発揮の“日本語”

カンボジアでは政府や警察の腐敗、犯罪組織との癒着が深刻で、事実上の“治外法権地帯”と化しているという。これらの犯罪組織は高額報酬の仕事をエサに、韓国や日本の若者を次々と国外へ誘い出している。

このような事態をめぐり、韓国法曹界では「被害者と犯罪組織をつなぐ“勧誘役”を人身売買レベルの重罪として処罰すべきだ」との声が上がっている。また、国際的な捜査協力の強化や、政府一体となった再発防止策の必要性も指摘された。

韓国警察庁によると、昨年から今年10月13日までの約2年間で、カンボジアに関連する失踪・監禁の疑いがある事件は143件報告されたという。このうち所在と安全が確認されたのは91件で、残る52件は現在も捜査が続いている。外交部(日本の外務省に相当)も同日、「安全が確認されていない韓国人は80人余りに上る」と明らかにした。

現在カンボジアには、中国系ギャングなどが運営する大規模な詐欺拠点が少なくとも50カ所以上存在するとされる。これらの組織は、ボイスフィッシングや違法ギャンブル、投資詐欺などを実行するために、韓国人を含む多国籍の被害者を動員している。被害者は「高収入の海外求人」や「恋愛詐欺」にだまされて現地に渡り、パスポートを没収されたうえで監禁され、1日12時間以上の過酷な労働を強いられているという。

韓国警察
(写真=サーチコリアニュース編集部)韓国警察

脱出を試みた者は暴行や拷問を受けることもある。プノンペンで拉致された20代の大学生パクさんは、1週間にわたり電気ショックや殴打による拷問を受けた末、8月に死亡した。遺体はいまだに韓国へ送還されていない。

パクさんをカンボジアへ誘ったのは、同じ大学の先輩にあたるホン氏だったことが判明。ホン氏は韓国国内で「口座売買(いわゆる通帳ブローカー)」に関与しており、パクさんを現地の詐欺組織と結びつけたとみられている。ホン氏は現在、電子金融取引法違反の容疑で逮捕・起訴されており、11月13日に大邱(テグ)地裁安東支部で初公判を迎える予定だ。

法曹界では、こうした「仲介・勧誘役」への処罰が軽すぎることが、事態の拡大を招いていると指摘する。ボイスフィッシングなどの詐欺組織は、首謀者・中間管理者・勧誘役・資金担当といった縦割り構造で動いており、このうち中間管理者は実刑が下されるケースが多い一方、勧誘役や資金担当は「自分も被害者だ」と主張し、軽い処罰で済む場合が多いという。

刑事事件を多数扱うキム・ヒョンジョン弁護士は「詐欺犯罪の中間管理者は近年厳しく処罰される傾向にあるが、依然として韓国の詐欺罪の刑罰は海外と比べて軽い」と指摘。「今回のように海外就職の斡旋を名目とする場合、単なる詐欺や電子金融取引法違反ではなく、“略取・誘拐”や“人身売買”の適用を検討すべきだ」と述べた。

一方で、「国内の刑罰強化だけでは限界がある」との意見もある。東南アジアなど海外を拠点にした詐欺組織の摘発には国際協力が不可欠だが、近年はこれらの国との共同捜査が以前ほど円滑に進んでいない。検察が一部の捜査から外れ、警察も担当する犯罪分野が急拡大した一方で、人員や予算が追いついていないためだ。

さらに、国会による特別活動費(特活費)の削減・凍結も要因の一つとされる。元検察官の弁護士は「海外拠点の詐欺組織は摘発されれば重い刑を受けるが、捕まらないと思うからこそ犯行を続ける。特に東南アジアでは証拠保全も難しく、現地警察の協力が不可欠だ。しかし、カンボジア警察を動かすには“活動費(いわゆる裏金)”が必要で、こちらが資金を出さなければ動かない。以前は特活費がそうした部分にも使われていたが、今は難しくなっている」と明かした。

一方、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領はこの日、「カンボジア拉致・監禁事件」について関係省庁から報告を受け、「利用可能な資源を総動員し、迅速かつ正確に、確実に対応せよ」と指示した。これを受け、政府はキム・ジンア外務第2次官を団長とする「政府合同対応チーム」を10月15日に現地へ派遣することを決定した。

また、パク・ソンジュ警察庁国家捜査本部長もカンボジアを訪れ、現地当局と拘束中の韓国人の送還計画を協議する予定。警察庁は「カンボジアで拘束されている63人の韓国人を1カ月以内に全員帰国させることを目標とする」と述べた。サイバー捜査隊も「高収入保証」などの文言でカンボジアへの勧誘を行う求人サイトやSNS投稿の監視を強化し、ボイスフィッシング対策センターと連携して詐欺誘引投稿の遮断に取り組む方針だ。

(記事提供=時事ジャーナル)

「ヤミバイト」「タチンボ」…韓国でも存在感発揮の“日本語”

「日本は本当に貧乏になった」東京が“性ツーリズム”の首都に?

【画像】「残酷で胸が痛い。日本人を嫌いになりそう」日本人の元AV女優

前へ

1 / 1

次へ

RELATION関連記事

デイリーランキングRANKING

世論調査Public Opinion

注目リサーチFeatured Research