旧統一教会とトランプ、そして日本 世界に広がる「政教癒着」の影

2025年12月12日 政治 #時事ジャーナル
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「アメリカの基盤を持つ“ホーリー・マザー・ハン”を知らないこの国の政治家たちよ、国民を悟らせてくれ」

【解説】旧統一教会と韓国政界の「不可思議な闇」

韓国政界に“政教癒着”の波紋を広げた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁は今年7月、特別検察が旧統一教会への捜査を本格化させていた時期にこう語った。「アメリカの基盤」と「この国の政治家」という言葉が同時に出てきた背景には、旧統一教会の影響力が世界中に及んでいることを示唆しているとの見方が出ている。

統一教会は大規模な不動産を所有し、食品・建設企業、文化芸術団体、各種教育機関、さらには韓国国内外のメディアを直接・間接的に運営するだけでなく、世界各地の政界にも影響力を行使してきたとされる。

旧統一教会と深い関係がある代表的な人物として挙げられるのが、世界で最も大きな権力を行使する存在とされるアメリカのドナルド・トランプ大統領だ。実際、トランプ政権は、キム・ゴンヒ特別検察チームが旧統一教会を家宅捜索した韓国政府に対し、懸念と怒りの感情を表明したこともあった。

トランプ大統領は8月、米韓首脳会談を前に突然、自身のSNSで韓国政府について「教会を残酷に急襲し、米軍基地にまで入り込んで情報を持ち出した」と主張し、「韓国では粛清、あるいは革命が起きている」といった過激な発言を相次いで投稿した。その後の首脳会談では「私の誤解だったことは確かだ」と一歩引いたものの、『CNN』はトランプ大統領が言及した教会は旧統一教会を指しているとの見方を示した。

トランプ大統領の「メンター」とも呼ばれる保守陣営の重鎮、ニュート・ギングリッチ元米下院議長は、さらに露骨に李在明(イ・ジェミョン)政権を批判した。

ギングリッチ元議長は、9月に特別検察が政治資金法違反の疑いで韓鶴子総裁を約9時間30分にわたって取り調べたことを受け、「韓国の新しい左派政権が複数の宗教を攻撃している」とし、「“マザー・ムーン(韓鶴子総裁)”を破壊しようとする狂った意図を持っているようだ」と非難した。

トランプ政権1期目で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏も、特別検察の動きをめぐり「宗教の自由に対する侵害が深刻化しているのは、韓国が支持すべき民主主義の原則を捨て去る行為だ」と主張した。

韓鶴子
韓鶴子総裁(写真=時事ジャーナル)

こうした指摘が出てくる背景には、トランプ政権と旧統一教会との間に何らかの関係があるためではないかとの批判もある。また、その関係を利用して、旧統一教会が韓国の政治家たちに影響力を行使したのではないかという疑惑も提起されている。

例えば統一教会は、2022年の第20代大統領選挙を前にマイク・ペンス前米副大統領を招き、教団行事である「韓半島平和サミット」を開催した。この際、当時の旧統一教会ナンバー2とされていたユン・ヨンホ前世界本部長が、ペンス前副大統領との会談を足がかりに、当時の与野党有力大統領候補であった「共に民主党」李在明候補と「国民の力」尹錫悦(ユン・ソンニョル)候補の双方に連絡を取っていた情況も確認されている。

トランプ大統領は2021年9月、旧統一教会が非対面で主催した行事で2回にわたり演説し、200万ドルを受け取ったこともあった。この行事には日本の安倍晋三元首相も基調演説者として参加した。

2022年7月、選挙遊説中の安倍元首相を銃で殺害した山上徹也は、母親が統一教会に傾倒していたことに不満を抱く中で、安倍元首相が統一教会側に祝電を送っていた事実を知り、犯行に及んだと伝えられている。

その後、日本では旧統一教会と自民党との癒着疑惑が相次いで暴露され、世論が大きく揺れ動く事態となった。

(記事提供=時事ジャーナル)

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