習主席「日本軍国主義に勝利した」発言の影響は…高市首相との会談控え、中国に“歩み寄った”李在明大統領《韓国経済誌の視点》

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「わが国は世界4大強国であるロシア、日本、中国、アメリカの中心に位置している。韓半島(朝鮮半島)を取り巻く外交環境は、米中関係が『史上最悪』と言われるほど悪化している点で、さまざまな不便を伴っている。韓国のように、アメリカの同盟国でありながら中国・ロシアと隣接し、さらに中国への経済依存度が極めて高い国にとって、これは深刻な挑戦と言わざるを得ない。(中略)わが国の国益に資さないものを放置してはならない」

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これは李在明(イ・ジェミョン)大統領の「外交の知恵袋」と称されるウィ・ソンラク大統領府国家安保室長の著書『韓国外交アップグレード提言』から抜粋したものだ。

そんなウィ・ソンラク室長の戦略が反映された結果なのだろうか。李大統領は、「近くて遠い国」中国の習近平国家主席との2度目となる首脳会談で、終始和やかな雰囲気を演出した。

朝鮮半島の安全保障、核潜水艦、西海(黄海)問題などの敏感な懸案については、「戦略的曖昧性」の基調を一貫して維持した。一方で、韓国の成長に不可欠な経済協力に関しては「1号セールスマン」を自任し、両国の高官級チャネル強化などを盛り込んだ了解覚書(MOU)14件を、電光石火の勢いで進めた。

李在明
李在明大統領(写真=大統領室通信写真記者団)

政界では、こうした会談結果をめぐる損得計算について意見が分かれている。

専門家の間では、李大統領が韓中関係の完全復元と成長動力の確保を同時に図り、「実用主義」外交の基調を守ったとの評価が出ている。とりわけ、曖昧性戦略を活用することで、中国と激しく対立する日本など他国との間に「外交リスク」の火種を生まなかった点も高く評価されている。

一方で、野党など一部からは中国に対する「屈従」姿勢を脱しきれず、「米日韓3国協力体制」に亀裂を生じさせかねないとして、批判の声も上がっている。

韓中協力チャネル再稼働…西海問題は次の段階へ

両首脳は1月5日(現地時間)、北京で2カ月ぶりに行われた90分間の首脳会談を通じ、尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権時代から続いていた“閉ざされた扉”を開き、今後「毎年」会うことで一致した。経済をはじめとする各分野で、戦略的協力パートナー関係を発展させる狙いだ。

李大統領は冒頭発言で「今回の首脳会談は、2026年を韓中関係全面復元の元年とするうえで重要な契機になる」と述べ、習主席も「中国は韓国と共に友好協力の方向を堅固に守るべきだ」と応じた。

その一環として、両首脳は会談直後から経済協力の「礎」を築く作業に着手した。

両国は、交流強化策を柱とするMOUなど協力文書14件の署名式を行った。まず、2011年を最後に15年間中断していた閣僚級定例協議体「韓中投資協力委員会」を再稼働させることで合意した。さらに、両国の産業団地協力強化MOUを通じ、相互に有益で実質的な投資拡大を目標に掲げた。

また、韓中自由貿易協定(FTA)第2段階交渉を年内に推進し、文化コンテンツ交流の強化などにも合意したと伝えられている。

しかし、当初の核心議題とされた△北朝鮮の非核化、△中国国内でのK-POP公演規制(いわゆる“限韓令”)の解除、△韓国の原子力推進潜水艦保有推進、△アメリカによるベネズエラ攻撃などの懸案については、両首脳とも「議論の必要性に共感する」との趣旨にとどめ、発言のトーンを抑えた。

台湾問題についても、李大統領は中国メディアとのインタビューで「『一つの中国』原則を尊重する」と、短いながらも明確な立場を示すにとどめた。敏感な地政学・安全保障問題に踏み込むより、相互利益が一致する経済課題を「関係改善」の原動力として戦略的に活用する判断が働いたものとみられる。

両国が対立している「西海問題」についても、実効性ある対策を導き出すことはせず、次の議論に持ち越した形だ。

ウィ室長は会談直後のブリーフィングで「西海を平和な海にするという認識を共有した」とし、「西海構造物や違法操業問題についても、慎重ながら前進が期待できるとの感触を得た」と語った。そのうえで、「2026年以内に次官級の海洋・海域経済境界画定に関する公式会談を開催できるよう、共に努力することで一致した」と明らかにした。

こうした実用外交戦略の構想は、ウィ室長が5年前、文在寅(ムン・ジェイン)政権時代に刊行した著書『韓国外交アップグレード提言』にも盛り込まれている。

ウィ室長は当時、激化する「G2(主要国)」米中対立の中での韓国外交の対応力について、「米中が貿易戦争の最中、さまざまな問題でそれぞれ韓国を圧迫しているが、われわれは回避的に対応してきた」と診断した。そのうえで「基本的な政策方向を定立し、明確に示すことで、(米中)双方が期待値を調整するようにする方が望ましい」とし、「どの地点が最もバランスが取れ、持続可能な『最適な座標』なのかを探るべきだ」と提言した。

特に対中外交については、「韓国は中国の戦略的意図に対する省察なしに、慣性に任せた対応をしてきた。放任が対策のようになっていた」とし、「韓国の対中経済依存度は異常なほど高まった」と指摘した。そして「主権を守ろうと努力しなければ、中国の磁場に引き込まれかねない。引力に備える基盤を整えると同時に、対中経済関係を戦略的観点から扱うべきだ」と述べ、「こうした措置を基本に、中国と良好な関係を発展させていく必要がある。相互尊重と互恵協力を追求する、開放的で節度ある行為者になるべきだ」と強調した。

李在明大統領は「最適な外交座標」を見出した?

ウィ室長が強調した「最適な座標」について、李大統領は会談直前に行われた韓中ビジネスフォーラムで「碧瀾渡(ピョンナンド)精神」に例えた。碧瀾渡は高麗時代、宋はもちろん、日本や中東など多くの国と交易を行った国際貿易港として知られている。

李大統領は「外交的緊張や葛藤があった時期にも、碧瀾渡を通じた交易と交流は中断されなかった事実に注目すべきだ」と述べ、中国との政治的対立があっても、経済交流と協力は継続すべきだとの意向を示した。

戦略的に行われた今回の会談結果をめぐり、政界からもさまざまな評価が出ている。専門家の間では、李大統領が両国関係の完全復元と成長動力を確保し、「実利」を得たとの評価が目立つ。

仁川(インチョン)大学政治外交学科のイ・ジュンハン教授は取材に対し、今回の会談のキーワードとして「実用」「国益」を挙げて「国益を強調し、実用的アプローチを取った」としたうえで、「経済的観点からも非常に大きな転換点になり得る。中国との競争関係から協力体制へと移行すれば、われわれも突破口が必要な状況の中で転換点を作ることになる」と評価した。

とりわけ、曖昧性戦略を活用し、中国と激しく対立するアメリカや日本など他国との「外交リスク」を最小限に抑えようとした点も高く評価されている。

イ教授は「曖昧性戦略を使い、アメリカや中国のどちらかに過度に傾かなかった」とし、「ウィ室長と李大統領の関係を見ると、相性の合う2人がコンビを組み、戦略効果を最大化した雰囲気だ」と述べた。

慶南(キョンナム)大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授もYTNの番組に出演した際、「(中国との懸案を)一度にすべて解決するのではなく、漸進的・段階的に解いていくという意味で理解すべきだろう」と分析した。

一方で、野党など一部からは、両国の敏感な懸案である西海問題などで中国に何一つ要求できなかったことが、果たして実益なのかという批判も出ている。

『国民の力』指導部の関係者は本サイト提携メディア『時事ジャーナル』に対し、「北朝鮮の非核化原則の再確認もなく、10年以上続く限韓令も解除できなかった。とりわけ西海構造物については、一言も言えず議論を先送りしたのではないか」とし、「終始、屈従的な姿勢では国益を守れない」と声を荒らげた。

特に、習主席が李大統領の前で言及した「日本軍国主義」発言は、今後の韓国と他国との外交路線に影響を及ぼしかねないとの懸念も出ている。

習主席は会談の席で、「80余年前、中国と韓国は莫大な民族的犠牲を払って日本の軍国主義に対抗し勝利を収めた。今日、さらに力を合わせて第二次世界大戦勝利の成果を守らなければならない」と述べ、「両国は歴史的に正しい側に立ち、正しい戦略的選択をすべきだ」と李大統領に促した。これに対し、日本の現地メディアは相次いで「習主席が韓日関係を分断しようとしている」と厳しく批判した。

イム教授は「今後も(李大統領には)多くの挑戦が待ち受けているだろう」とし、「特にアメリカとの関係が核心だ。アメリカは可能な限り中国の成長を抑制しようとしており、台湾問題をめぐっても安全保障の次元で強い圧力をかけている。その米中の間に韓国がある」と指摘した。

そのうえで、「果たして『安全保障は安全保障、経済は経済』と切り分けたアプローチで最後まで行けるのか。こうした点が今後注視すべき部分だ」と展望した。

李大統領の新年の「対外政策」の成績表は、来週予定されている日本訪問で輪郭が見えてくる見通しだ。李大統領は、高市早苗首相の地元である奈良県を訪問し、日韓首脳会談を行う予定だという。

ウィ室長が5年前、文在寅政権に向けて著書で伝えた「中国、日本との関係を新たな次元へと開く作業を始めてほしい。自主・協力・統一の未来へ向けた新たな対日・対中外交の元年となることを期待する」との提言が2026年に実現するのか、その行方に注目が集まっている。

(記事提供=時事ジャーナル)

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