北朝鮮の戦闘兵力がロシアに派兵されたことに対し、韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)政権が連日にわたって積極的な対応に乗り出している。
これまで以上に直接的に、武器や人員などでウクライナ支援に踏み切るとの観測も出ている。最近、メディアでは、韓国政府がウクライナに北朝鮮の捕虜を尋問する対北心理分野の専門家を派遣することを検討しているとの報道もあった。
北朝鮮の派兵が国際社会の安全保障を超え、朝鮮半島を脅かす可能性があるという懸念の中、積極的かつ先制的な対応に出るという政府の姿勢と解釈されるが、外交・安全保障の専門家の中には、韓国政府がもっと慎重に対応すべきだとの指摘も出ている。
これまで出された政府の主要人物の公開発言を考慮すると、国家情報院の人員派遣の検討などは、予定された流れという見方が多い。すでに韓国政府は様々な可能性を最大限に開いている。
10月22日、シン・ウォンシク国家安保室長が主催した緊急安全保障会議(NSC)の直後、キム・テヒョ国家安保室第1次長はブリーフィングで「段階的対応」として、「断固として対処する」と述べていた。特に大統領室の高官は「攻撃用」武器の直接支援の可能性まで示唆した。
大統領室では「殺傷用」武器ではなく「攻撃用」武器と表現を和らげたが、ユン・ソンニョル大統領が直接、殺傷用武器支援の可能性に言及したりもした。
ユン大統領は10月24日、龍山(ヨンサン)の大統領室で行われたアンジェイ・ドゥダ・ポーランド大統領との首脳会談後の共同記者会見で、「大原則として殺傷用武器を直接供給しないという原則を持っていたが、より柔軟に、北朝鮮軍の活動次第では検討することができる」と述べた。
まだ「検討」段階ではあるが、一部の専門家は懸念や助言を示している。
漢拏(ハルラ)大学校のチョン・デジン教授は「『検討』自体が交渉の手段となるカードであるため、このカードをすぐに使用するのではなく、それを持ってロシアと直接的かつ緊密な対話が最も重要な時期だ」とし、「我々の調整にロシアが応じるよう、すべてのチャンネルを駆使してロシアと直接対話し、北朝鮮とロシアの協力を遅らせたり、調整したりする必要がある」と強調した。
政府の殺傷用武器支援に懸念を抱く多くの専門家は、政府の対応において、北朝鮮とロシアを分離する必要があると共通して指摘している。軽率な対応によって、ロシアとの関係が修復困難なほど悪化する可能性があるという警告だ。
特に一部では、韓国の国家情報院がアメリカやNATO(北大西洋条約機構)などの西側諸国よりも先に北朝鮮の派兵を公式に認め、強硬対応に出たことを異例だと分析している。
国家情報院は10月18日、北朝鮮の派兵事実を確認したと発表し、人数や任務などの詳細な内容を公開した。アメリカなどの主要国が明確な答えを避けたこととは対照的だ。軍の高官出身のある安全保障専門家は「(国家情報院の発表の)タイミングは非常に急であり、内容がかなり詳細だった。よく見られる場面ではないようだ」とし、「政治的な判断が介入した可能性がある」と慎重に指摘した。
「政治的判断」が必要な要因には、国内の政治状況が含まれていた可能性があるとの分析もある。大統領の国政遂行に対する支持率が毎週最低値を記録する中、北朝鮮派兵問題を一部、局面転換のために利用しているのではないかという見方だ。
野党、特に「共に民主党」は、最近の政府が北朝鮮派兵問題を政治的な危機の打開策としているとし、「新・北風煽り」と規定している。
共に民主党のイ・ジェミョン代表は10月28日、国家情報院の人員派遣検討について「決して行ってはならないこと」とし、「朝鮮半島で戦争を計画しているのではないかという疑念が生じているが、今の行動を見るとまったく根拠のない憶測とは言えない」と指摘した。
このような野党の攻勢に対し、「国民の力」の関係者は「安保を軽視している野党のフレームに過ぎない」と一蹴した。
国家情報院出身の安全保障専門家であるチョ・ギョンファン成均館大学国政専門大学院教授は、「大統領や政治家はどんな状況でも自分の政治的な困難を解決するために、それを利用したくなる誘惑を感じるが、そうすべきではなく、政府はこの局面で現実を正確に認識すべきだ」と述べた。
そして「緊張感は維持しつつ、今後、国際社会が北朝鮮を強く孤立させざるを得ない状況になるが、我が政府もそれに歩調を合わせ、もう少しゆっくりと、内面的には抑制しながら進む必要がある」と助言した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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