国技・テコンドーとともに、韓国が最も得意とする種目はアーチェリーだ。1972年ミュンヘン五輪で正式種目になって以来、韓国は世界トップの座を守っている。
国際大会では、アーチェリー韓国代表選手が標的の真ん中に仕込まれたカメラを的中させたり、矢にまた矢を打ち込むなどの神技もしばしば見せている。国際大会で韓国人選手同士が金メダル争いをするのも珍しくないくらいだ。
韓国には「もうアーチェリーは韓国の国技だ」という冗談もある。それほど韓国はアーチェリー強国なのだが、現在の地位に上り詰めるまでには“ただならぬ努力”があった。
以前、とある外国のアーチェリー選手や監督が、韓国のアーチェリーを学ぼうと訪韓したことがあるらしい。
ところが、韓国人選手たちの基礎練習を目にしただけで脱帽し、国へ帰ってしまったそうだ。
その基礎練習というのは、「三日間寝ない」「首に生きた蛇を巻いて走る」「墓地で肝試し」などなど。冗談にしか聞こえないメニューばかりだが、実際に練習メニューにあったそうで、そうやって選手たちのメンタルを強化させていたそうだ。
近年も、韓国代表チームは独特な練習を行っている。それは、野球場や競馬場で行う「騒音訓練」だ。
アーチェリー韓国代表は、プロ野球の試合が始まる前にちょっとだけ時間をもらって練習試合を行う。前もって場内アナウンスを通じて「大きな喊声をお願いします」とお願いされた観客たちは、やじ・罵詈雑言・セクハラ・ホイッスル・ブブゼラなど、あらゆる騒音をアーチェリー選手たちに浴びせる。選手たちはそんな舞台でも集中できるメンタルを磨くのだ。
この練習を始めるきっかけになったのは、2008年北京五輪。それまで6連覇を達成していた女子個人戦で、韓国のパク・ソンヒョン選手が中国の張娟娟選手に1ポイント差で敗北し、金メダルを逃してしまった。パク選手が集中できなかった理由として挙げられたのは、中国の応援団による騒音。北京五輪のあと、騒音対策として考えたのがこの騒音訓練だという。
そこまで歯を食いしばって練習を行う韓国代表チーム。当然のごとく選手同士の競争が激しく、1秒たりとも緊張を解けないらしい。
例えば、2014年に行った仁川アジア大会の韓国代表選抜戦。
そこで、2012年ロンドン五輪の金メダリストで世界ランキング2位だったキ・ボベ選手は、10位となり、落選した。韓国アーチェリー界でよく言う「オリンピック金メダルより、韓国代表になるほうが難しい」という言葉が、再現されたのだ。
すさまじい練習とともに、韓国がアーチェリー強国となれた背景には、「大韓アーチェリー協会」の努力も大きい。
韓国スポーツ協会の多くが派閥や不正腐敗で騒動を起こすなか、大韓アーチェリー協会はクリーンな運営でアーチェリー界を支えてきた。国内で行われる選抜戦はネットでライブ配信し、国民に韓国代表の誕生を見てもらう。厳しくもクリーンに選手同士を競争させ、世界トップレベルの選手たちを絶えず輩出してきたわけだ。
圧倒的な実績と実力を誇る韓国アーチェリー。東京五輪でもアーチェリー強国のプライドは守られるか、注目が集まる。
(文=サーチコリアニュース編集部)
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