このままでは、プレミアリーグから韓国人選手が姿を消すかもしれない――韓国で今、「プレミアリーガー全滅」の現実味が語られ始めている。
【注目】「日本の比較対象にもならない」元代表も嘆く韓国サッカーの現在地
2015年夏から10シーズンにわたりトッテナムでプレーしたソン・フンミンは、今夏に米MLSのロサンゼルスFCへ移籍した。アジア人初のプレミアリーグ得点王に輝き、キャプテンも務めたクラブの象徴は、通算333試合127ゴールという金字塔を打ち立ててイングランドを後にした。
そのソンの退団後、プレミアリーグに残った唯一の韓国人選手がファン・ヒチャンだ。2021年夏にウォルヴァーハンプトンへ期限付き移籍で加入し、翌年1月に完全移籍。2023-2024シーズンにはリーグ戦13ゴールを挙げ、チーム最多得点者として評価を高めた。
しかし今季は一転、厳しい状況に置かれている。チームは第17節終了時点で2分15敗と最下位に沈み、開幕から4カ月が経過しても未勝利。ファン・ヒチャン自身もリーグ戦12試合で1ゴールにとどまり、現地メディアの「今季プレミアリーグ最悪の選手20人」で3位に選ばれるなど、苦しい評価が続いている。
そんなファン・ヒチャンの苦境に口を開いたのが、2002年日韓ワールドカップなど2大会を経験し、大宮アルディージャでもプレーした元韓国代表のイ・チョンスだ。
彼は23日、個人YouTubeチャンネル「リ・チュンス」で「英プレミアリーグに韓国人が一人もいなくなるのか…?」と題した動画を公開。「正直、ソン・フンミンがいなくなってからプレミアリーグをあまり観なくなった」と率直な心境を明かし、「ファン・ヒチャンが一人で踏ん張っているが、かなりギリギリだ。彼まで抜ければ、プレミアリーガーはいなくなる」と危機感を示した。
もちろん、英国でプレーする韓国人選手が皆無というわけではない。ニューカッスル・ユナイテッドには今夏加入した18歳のパク・スンスがU-21チームに所属し、2部チャンピオンシップではペ・ジュンホ(ストーク)、オム・チソン(スウォンジー・シティ)、ヤン・ミンヒョク(ポーツマス)、ペク・スンホ(バーミンガム)らが奮闘している。
それでも、人気と競技レベルの両面で世界最高峰とされるプレミアリーグで、韓国人選手の存在感が薄れつつある現状を、イ・チョンスは寂しげに見つめている。
動画の中でイ・チョンスはこう続けた。
「ソン・フンミンはプレミアリーグで127ゴールを挙げた。ファン・ヒチャンは23ゴール、今活躍していると言われる三笘薫でも21ゴールだ。100ゴール以上の差がある。ソンは得点王にもなった。アジアのレベルではなかった」
あまりにも突出した存在だったからこそ、ソン・フンミンが去った後の空白は大きい。
「韓国人は“韓国人選手がいるチーム”を応援する。だが今、誰がトッテナムの試合を観るのか。だったらロサンゼルスFCの試合を観るだろう。ソンはキャプテンで、必ずピッチに立っていた。しかしファン・ヒチャンは出場機会が限られ、チームも負け続けている。そうなれば、自然と観なくなる」と
そう語ったうえで、イ・チョンスは「もっと多くの後輩がプレミアリーグに進んでほしい。そのためにも、ヒチャンが良い姿を見せなければならない。彼の頑張りは、後輩たちの道にもつながる。応援したい」と後輩への思いも口にした。
かつてマンチェスター・ユナイテッドで活躍したパク・チソンを起点に、イ・ヨンピョやイ・チョンヨン、キ・ソンヨン、そしてソン・フンミンらへと受け継がれてきた「韓国人プレミアリーガーの系譜」はこのまま消えてしまうのか。ファン・ヒチャンの奮起に韓国サッカー界の視線が集まっている。
(記事提供=スポーツソウル日本版)
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