忘れられないインタビューがある。今から5年前のことだ。
ソウルから2時間半。果てしなく広がる青空の釜山に到着するやいなや、ロッテ・ジャイアンツの本拠地・社稷(サジク)球場を訪れた。ロッテ・ジャイアンツのチアリーダー、パク・キリャンをインタビューするためだった。
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パク・キリャンと言えば、“NO.1チアリーダー”、“国民チアリーダー”と呼ばれる韓国で最も有名なチアリーダーだ。
待ち合わせ場所は、社稷球場の関係者入り口に隣接された喫茶店。平日の13時ということもあって、客足は鈍い。
ところが、約束の時間にパク・キリャンが店内に入ってくると、サインを求めようと数人の客が集まってくる。それどころか、わざわざ喫茶店の外から店内に入ってくる人もいた。それほど彼女の存在感は大きかった。
不意に開かれたサイン会が一段落すると、パク・キリャンは私の真正面に着席する。羽田空港で買ってきた「東京ばな奈」をパク・キリャンに渡すと、満面の笑顔で受け取ってくれた。チアリーディンクする彼女の姿を見てどちらかと言えば、クールビューティーなイメージがあっただけに、意外な印象だ。
こうして彼女とのインタビューが始まった。
最初に聞きたかったのは、日本の印象だ。というのも、去る2月、ロッテ・ジャイアンツは日本の鹿児島で合宿を行っており、パク・キリャンもそこに帯同していたのだ。彼女はそこで、とある日本人とのエピソードを話してくれた。
「初日にホテルに入ったときに、30代くらいの男性が少しぎこちない韓国語で“アンニョンハセヨ、パク・キリャン氏、ファンです”と話しかけてきたんです。“プレゼントです”とだけ話されて、去っていきました。最初は韓国の人かなと思いました。だって日本の方が私のことを知っているなんて思わないでしょう? でもやっぱり日本の方だと思うし、とてもうれしかったですね」
パク・キリャンが日本を訪れたのは、今回で3回目とのこと。昨年、一昨年も同じ理由で日本にやってきていた。
「日本の印象は、人々がとても親切だなというもの。私の性格が大雑把だからかもしれません(笑)。私が訪れた鹿児島は、田舎のほうだと聞きました。それが理由なのか、人々がとてもゆとりを持っていた印象もあります」
ここで一度、パク・キリャンが所属するロッテ・ジャイアンツというチームを簡単に説明したい。
本拠地は首都ソウルに次ぐ、韓国第二の都市・釜山広域市。その名の通りロッテグループが親会社となっており、1975年に創設された。“球都・釜山”という言葉からもわかる通り、熱狂的なファンが多いチームとして知られている。名前はジャイアンツだが、日本で言えば阪神タイガースが近いかもしれない。パク・キリャンもファンの熱気を日々実感しているという。
「ロッテ・ジャイアンツは本当にファンの多いチームなんです。応援にも地域性があるというか、特徴があります。球場に訪れるロッテファンは、本当に情熱的。そんなロッテ・ジャイアンツの一員ということは私にとって大きな誇りですし、すべてのチアリーダーが一度はロッテ・ジャイアンツでやってみたいと話すほど、応援も盛り上がるんですよ」
ロッテ・ジャイアンツにおけるパク・キリャンの立場は、チアリーダーたちのチーム長。22歳のときに最年少チーム長となったのだ。(つづく)
文=呉 承鎬
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