韓国の朴槿恵前大統領が大統領職を解かれてから約7カ月が経った。
いわゆる「崔順実ゲート」をはじめとした不祥事により、1987年の民主化以降、大統領として初めて罷免されたニュースは日本でも大きく取り上げられていたが、彼女は今、どこで何をしているのだろうか。
朴槿恵前大統領は現在、拘置所で生活を送っている。
彼女の18件にも及ぶ容疑について、裁判が続けられているからだ。
職業を問われ「無職です」と答えて話題を呼んだ5月23日の初公判以降、現在も1審判決は出ておらず、10月16日に終了する予定だった1審拘束期間は、同日の公判で最長6カ月延長することが決定された。
拘束期間の延長について朴槿恵前大統領は、「拘束と裁判は政治報復」「再度の拘束が必要だという決定を私は受け入れがたい」などと心境を語った。
「拘束されて裁判を受けた去る6カ月は、みじめで悲惨な時間だった」という発言は、拘置所生活の苦しさを物語っている。
もっとも、朴槿恵前大統領の拘置所生活は贅沢だ。
ソウル拘置所や韓国法務部(省に相当)などの証言によれば彼女は、本来6~7人で使用する部屋を改造した特別仕様の部屋で暮らしているのだという。
部屋面積は10.08㎡(約3.5坪)。6畳一間のワンルームで一人暮らしをしているイメージだ。国連では監獄は収容者1人当たり2.7㎡以上の広さでなくてはならないと定められていることを考えても、彼女の独房はかなり広いことがわかる。
しかも、部屋には床暖房設備にテレビまであり、テレビドラマも視聴できるらしい。配給される食事や食器、日課などは一般の拘束者と変わらないそうだ。
韓国メディアの報道では、朴槿恵前大統領はこの部屋で、英語の聖書や歴史小説を読んで過ごしているとの情報も。山岡荘八の小説『徳川家康』を読んでいるとの報道もあった。
ただ、元大統領の父のもとで不自由なく育てられた彼女は、この生活に不満を爆発させている。
アメリカCNNテレビが朴槿恵前大統領の依頼を受けたとされるイギリスの弁護士を取材したところによると、彼女は拘置所内で自身に対する人権侵害があると主張しているらしい。
監房が汚くて寒いこと、夜中も証明が完全に消えず眠れないこと、腰痛や関節炎について満足な治療を受けられないことなどを訴えたという。
こうした訴えに対し、韓国法務部は真っ向から反論。
上述した設備や、夜間の見回り用の常夜灯は照度が非常に低いことなどについて説明しながら、これまで外部の医療機関で2度の診察を受けるなど治療に関しても十分な機会が保障されていると述べた。
「たしかに人権侵害だ」
それだけに、韓国では朴槿恵前大統領の拘置所生活に対して批判が噴出している。
共に民主党のパク・ジュミン議員は、「ほかの刑務所では定員3人の部屋に5.85人が収容されている現状を考慮すると、それよりも広い部屋を一人で使用している朴前大統領は、礼遇を超えて不当な特恵を受けていると見るべきだ」と非難。
正義党のノ・ヒチャン院内代表は「皇帝収監だ」と皮肉っている。
韓国ネット民の意見も手厳しい。「豪華な生活ですね。だから、一生独房で生活したらどうでしょうか」「韓国の少なくない貧困層は、朴槿恵の独房生活でさえうらやましいというのに」「一般の収容者と同じ扱いにして、社会性を育ててやろうよ」「たしかに人権侵害だ。ほかの収容者に対する人権侵害!!」といった具合だ。
いずれにせよ、当面の間は続く朴槿恵前大統領の拘置所生活。これからも彼女の“皇帝収監”に注目していきたい。
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