医師不足によって「盲腸で死ぬ国になってしまった」という皮肉が広がっている韓国で、再び“病院たらい回し”による悲劇が起こっていたことがわかった。
12月3日、『ニュース1』と『YTN』によると、11月15日午前0時30分頃、京畿道・水原(スウォン)で16歳のA君が突然倒れた。彼は「頭が痛い」という最後の言葉を残し、意識を失った。
脳血管障害である「もやもや病」を患っていたA君は、倒れた後に脳出血と診断された。特に理由もなく脳血管が狭くなる稀少疾患であるもやもや病は、脳への十分な血液供給が続かないと脳出血などの脳損傷を引き起こす。
緊急手術が必要な状況だった。しかしA君を載せた救急車は、しばらく動くことができなかった。集中治療室の空きがないこと、何よりも医者が不足しているという理由で、彼を受け入れる病院がなかったのだ。
A君の自宅近くには大学病院が2カ所あったが、診療可能な場所はなかった。近隣地域であるソウルや龍仁(ヨンイン)にある大学病院も、集中治療室の不足や医療人員不足などの理由で搬送が不可能だとした。
最初の通報から70分後、A君は自宅から9km離れた病院の救急室に搬送されたが、その病院でも手術は難しいといわれた。設備と医療人員が不足しているという理由だった。
最終的にA君は、最初の通報から6時間後に京畿道・軍浦(クンポ)市にある病院の手術台に上がった。しかし治療は間に合わず、A君は昏睡状態に。1週間後、死亡した。
先立って9月にも、腹痛と嘔吐を訴えた50代の男性が救急隊を呼んだが、病院10カ所に電話で搬送の問い合わせてもすべて拒否され、亡くなった事例があった。
その50代男性は急性腹膜炎と診断されたが、医療スタッフの不足などの理由で手術を受けることができず、手術可能な病院を1時間以上にわたって探し続け、治療が遅れたことで亡くなっている。
今回のA君や50代男性の悲劇を受け、韓国のオンライン上では「政治が人を殺した」「国がおかしい方向に進んでいる」「本当に残念な犠牲だ」と嘆くコメントが並んだ。
これらの悲報がオンライン上で“政治の問題”と見なされているのは、韓国政府の「医大定員増加政策」が背景にあると考える人が少なくないからだ。
今年2月、韓国政府は医師不足解消に向け、大学医学部の入学定員(現在3058人)を2025学年度の入試から5年間にわたって毎年度2000人増やすことを発表した。
しかし韓国医師協会は、この政策に強力に反対している。医師が増えるということは競争が激化し、医師の収入が減るということに他ならないからだ。
これによって全国の病院で複数の医師が出勤を拒否するストライキが始まり、研修医が集団で辞表を提出した。若手医師の反発も強い。彼らは救急病棟の中核を担う存在だ。医学部の学生たちも立場は同じで、休学届を提出し、授業をボイコットする事態となっている。
今回のような“病院たらい回し”は、医療の空白が続くなかで頻発している問題だ。しかし医学部の定員増加をめぐる医療界と政府の対立は10カ月以上も続いており、出口が見えない状況にある。
医療界と政府の対立が続く限り、このような悲劇が繰り返されてしまうのかもしれない。
(文=サーチコリアニュース編集部O)
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