韓国では最近、来年度の最低賃金を決めるための最低賃金委員会第9次全体会議が開かれた。
この会議で労働界と経営界は、それぞれ6回目の修正案を提出した。
労働界は当初提案していた時給1万1500ウォン(約1219円、現行比14.7%引き上げ)から1万1020ウォン(約1169円、9.9%引き上げ)へと一歩譲歩した。一方、経営界は従来の「据え置き」から、1万150ウォン(約1077円、1.2%引き上げ)へと修正した案を提示した。
両者の立場が真っ向から対立するなか、興味深い研究結果が発表された。
財団法人Pi-Touch研究院は最近、最低賃金引き上げが雇用市場に与える影響を分析した報告書を発表した。その結果、最低賃金が1%引き上げられると、正規職と非正規職の月間労働時間の差が平均1.15時間拡大することがわかった。
具体的には、正規職の労働時間は月0.03時間減少するのに対し、非正規職の労働時間は1.19時間減少した。これは、最低賃金の引き上げが非正規職の労働時間により大きな影響を及ぼすことを意味する。
現場でもこうした現象は容易に見られる。筆者がよく訪れるあるカフェは、以前は深夜0時まで営業していたが、最近では22時に閉店時間を繰り上げた。店舗のオーナーによると、最低賃金の引き上げによる人件費負担が主な理由だという。人件費を負担できない自営業者や小規模事業者が、非正規職の労働時間を削減する形で対応しているのが実情だ。
この研究結果を両者の6回目の修正案に当てはめてみると、差は明白だ。
労働界が提示した9.9%引き上げ案を適用すると、正規職と非正規職の労働時間の差は月11.4時間、年間では実に136.6時間にまで広がる。一方、経営界の1.2%引き上げ案を適用すると、月1.4時間、年間16.6時間の差にとどまり、その幅は相対的に小さい。
この分析の信頼性を確保するために、研究チームは2007年から2024年までの最低賃金委員会および雇用労働部の「雇用形態別労働実態調査」のデータを活用し、長期的な傾向も検討した。
この期間に最低賃金は3480ウォン(約369円)から9860ウォン(約1045円)へと約2.8倍に引き上げられ、同期間の正規職と非正規職の月間労働時間の差も21.8時間から56.4時間へと約2.6倍に拡大した。両変数の相関係数は85%で、統計的に有意な水準だった。
つまり、最低賃金が上がるほど、正規職と非正規職の労働時間の格差も拡大する傾向が見られるということだ。
経済状況も考慮すべき重要な要素だ。
韓国銀行は今年の経済成長率を0.8%と予測しており、国際金融センターが集計した世界の主要投資銀行8社の平均予測値は0.9%にとどまっている。同期間(1~6月)の消費者物価上昇率も平均2.1%にとどまっている。こうした経済状況を考えると、9.9%という最低賃金の引き上げ要求は過剰だという指摘が出ている。
何より重要なのは、最低賃金の引き上げが、むしろ脆弱な立場にある非正規職にとって「働く機会の減少」につながる可能性があるという点だ。賃金水準だけでなく、労働時間というもう一つの格差にも注目し、慎重な決定が必要だ。
●Pi-Touch研究院、ラ・ジョンジュ研究院長
(記事提供=時事ジャーナル)
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