韓国で、育児休業中の会社員の国民年金保険料のうち、雇用主が負担する分を国が全額支援する場合、今後5年間で1兆6576億ウォン(約1658億円)の財政投入が必要になるという国会予算政策処の分析が出た。
「国民年金の死角地帯解消」が李在明(イ・ジェミョン)大統領の主要公約の一つであることから、与党「共に民主党」が関連法案を相次いで発議するなか、大統領任期中に公的年金への支援が強化されるか、そしてそれに伴い政府財政の負担も増えるのか注目されている。
7月9日、国会議案情報システムによると、「共に民主党」はパク・ヒスン議員が代表発議した国民年金法一部改正案を通じて、育児休業中の会社員の国民年金保険料のうち、会社が負担する部分を国が全額支援する案を推進中だ。
国民年金の会社員加入者は、保険料を会社と50%ずつ負担する仕組みのため、改正案が通過すれば、休業期間中の保険料の半分を国が負担することになる。
この法案は、育児休業者の年金受給における不利益を緩和し、少子化問題の解決にも寄与するという趣旨だ。
現行制度では、会社員が育児休業を取る場合、自身と会社が国民年金保険料を支払わなくてもよい「納付例外」を申請できる。育児休業者は会社から給料が支払われず、育児休業給付のみを受け取るため、所得が大幅に減少し経済的負担が大きい。一方、会社側も半分の負担を抱えるため、保険料納付義務を負わずに労働者の国民年金加入資格を維持できる「納付例外」を申請するのが一般的だ。
しかし、納付例外を申請した期間に支払わなかった保険料に比例して、将来的に受け取る年金額が減るというデメリットがある。「後納制度」を利用すれば、休業中に払わなかった保険料を後から納付できるが、この場合、自身の分だけでなく本来会社が負担すべき分まで本人が支払わなければならず、負担が2倍になる。
日本では3歳未満の子どもを育てるために育児休業を取った場合、健康保険および厚生年金の保険料を免除し、その財源を国庫で負担している。「共に民主党」も少子化対策および仕事と家庭の両立環境の整備という観点から、財政支援を拡大しようとしているようだ。
国会予算政策処は、法案が施行される場合、2026年から2030年までの5年間で計1兆6576億ウォン、年間平均3315億ウォン(約332億円)の国の財政投入が必要と試算した。
国民年金保険料は「基準所得月額」に基づいて算定されるが、育児休業者の基準所得月額に関する明確なデータがないため、代替指標として「通常賃金」が試算に用いられた。
具体的には、予算政策処は雇用労働部の資料をもとに、全国の育児休業者が取得した休業期間を合計した「総支援月数」に平均賃金、保険料率、そして雇用主負担比率(50%)を掛ける方式で年度別の財政需要を算定した。例えば、1年間に10万人が平均1年の育児休業を取得した場合、その年の総支援月数は120万月となる計算だ。
雇用労働部の育児休業給付受給者現況によると、育児休業給付の受給者数は2021年の11万555人から2024年の13万2535人へと、約2万2000人増加した。これに伴い、総支援月数は2021年の119万3637カ月から2024年には137万9222カ月となり、年平均増加率は4.9%となっている。
この間、平均賃金は月270万ウォン(約27万円)から309万ウォン(約30万9000円)へと年平均4.6%上昇している。
予算政策処は、育児休業者数と平均賃金が今後もこの傾向で増加する場合、支援費用は2026年に2445億ウォン(約245億円)から始まり、2030年には4302億ウォン(約430億円)まで増加すると予測した。これは、総支援月数が184万1439カ月、平均賃金が410万ウォンに増加すると仮定した結果だ。さらに、国民年金改革により2026年から0.5ポイントずつ上昇する保険料率も反映された。
これは育児休業者が増えれば増えるほど、財政投入額も増える構造だ。最近、育児休業者が毎年増加傾向にあることから、法案が通過すれば国家の負担も徐々に増大する可能性が高い。
最近の増加傾向は、政府が育児休業給付の引き上げや企業支援拡大など、仕事と家庭の両立を推進する政策を続けてきた結果であり、雇用労働部は少子化が深刻化するなか、この方針をさらに強化する計画だ。
国民年金に関連する現金性福祉制度がすでに存在することから、公平性の指摘など解決すべき課題もある。
国民年金はすでに「出産クレジット」制度を実施しており、第2子以降を出産または養子縁組した国民年金加入者には年金加入期間が追加で認められている。これも少子化が深刻な社会問題として浮上するなか、育児による困難を抱える親の老後保障を強化する政策だが、地域加入者、短期労働者、非正規職などへの福祉は相対的に少ないのが現状だ。
財政専門家である明知(ミョンジ)大学のウ・ソクジン教授は「少子化問題が深刻なので、何かしら対策は必要だが、他の現金性支援制度がすでに存在するなかで、地域加入者や職場扶養者などとの公平性を将来的に検討する必要がある」と指摘した。
一部では、「国民年金の死角地帯解消」が李在明大統領の核心公約であるだけに、このような制度が増えるほど国家財政の負担も大きくなるという懸念も出ている。特に、育児休業中の保険料の雇用主負担分を支援しても、実際に個人が受け取る年金額の増加幅は大きくなく、財政投入に見合う効率性が低いという指摘もある。
ただし、ウ・ソクジン教授は「例えば民生回復のための消費クーポンでは、13兆ウォン(約1兆3000億円)を投入するが、個人が受け取るのは数十万ウォン(数万円)程度なので誤った政策だと言えるのか」とし、「国民年金の構造上、加入者に対する福祉効果は明確であり、少子化克服にどの程度効果があるかといった指標を見て判断すべき問題だ」と説明した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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