就任から1カ月が経過した李在明(イ・ジェミョン)政権が、「人口政策」コントロールタワー設立に向けた「青写真作り」に着手した。
李大統領は尹錫悦(ユン・ソンニョル)前政権時代から、少子高齢化および地方消滅・首都圏一極集中の問題に対応するため、与野党・政府の協議機構が必要だという立場を強調してきた。
ただ、今回の大統領選挙公約では人口問題を統括する組織新設に関する内容が曖昧で、前政権の政策を列挙しただけであり、「人口省庁」新設に対する意志が消えたのではないかという批判もあった。
そのため、与党側では「今が地方消滅と人口問題を解決するゴールデンタイムだ」とし、政策専門機関の新設の必要性を提起している。
“李在明式”人口政策が明確ではないという指摘が続くなか、政府も人口問題への対応へ本格的に注力している。
李在明政権の国政方向を設計している国政企画委員会は最近、人口タスクフォース(TF)を構成し、人口減少に関する議論を本格化した。
これにより、前政権から続く「人口戦略企画部(以下、人口部)」の設立や、「共に民主党」所属議員らが提案していた「人口未来部(仮称)」あるいは「人口総括部(仮称)」の新設が検討される見通しだ。
人口問題を所管する省庁が新設される場合、関連性の高い企画財政部や保健福祉部、行政安全部などから人材を移管し、新たな人材を補充する方式となると予想される。
人口問題コントロールタワーをめぐり多様なシナリオが取り沙汰される中、『時事ジャーナル』はこれらのシナリオごとに新設される省庁の予算推計結果を分析した。
国会の議案情報システムによると、「共に民主党」所属議員が人口政策関連省庁の新設を主軸とした政府組織法改正案を発議しており、主に3件の法案がある。
各法案に対して国会予算政策処が発表した費用推計書によれば、各シナリオによって最低1163億200万ウォン(日本円=約123億円)から最大1730億7200万ウォン(約183億円)の追加財政が必要とされている。
まず、「人口未来部」新設法案はキム・ハンギュ議員が代表発議した。この法案は大統領統括下にある行政各部に人口未来部を追加し、同部の長官が少子高齢化政策をはじめとする人口構造変化に関する業務を統括するという趣旨だ。
予算政策処は人口未来部の設置を2つのシナリオに分けて財政を推計した。
一つ目のシナリオは、長官と次官以外に200人を増員し、合計241人で運営する案だ。
これにより、人口未来部の設置・運営には2026年から2030年の5年間で1163億200万ウォン、年平均232億6000万ウォン(約24億円)がかかるとされた。このうち、人件費が全体の約76%(886億5000万ウォン=約93億円)を占める。
二つ目のシナリオは、さらに200人の人員を追加配備する案で、必要な予算は5年間で1726億600万ウォン(約182億円)、年平均345億2100万ウォン(約36億円)と算出された。こちらも人件費が1322億8400万ウォン(約139億9223万円)と最も大きな比重を占めた。
人口未来部の人材は、既存の人口政策業務を担当した省庁から人材が移籍するという前提で推計された。
例えば、中長期的な人口政策の策定・総括・調整、少子高齢化など人口構造の変化対応業務を担当してきた保健福祉部がこれに該当する。この場合、移籍人員の人件費は既存の予算で調整するとして、推計対象から除外された。
ただし、人口未来部の定員規模は行政安全部、企画財政部、統計庁などとの協議を通じて職制を定める必要があり、現時点で正確な予測は難しいというのが予算政策処の説明だ。
次に、「人口部」設立法案はキム・ユン議員が代表発議した。人口部は前政権でも推進された経緯がある。
この法案は、人口部長官が人口政策の策定から予算確保までを管轄し、国務総理から委任された業務を担うために、副首相を3人にするというのが核心だ。現在の企画財政部長官と教育部長官という2人体制に「人口部長官」を加える内容だ。
予算政策処は、人口未来部と同様に人口部の設置・運営を「441人運用案」と「641人運用案」の2つのシナリオで設計した。
追加財政規模も類似しており、前者では今後5年間で1163億2900万ウォン(約123億円)、年平均約232億6500万ウォン(約24億円)が必要とされた。
後者では5年間で1730億7200万ウォン、年平均約346億1400万ウォン(約36億円)が必要とされた。このうち人件費の比率が最も高く、それぞれ886億7300万ウォン(約93億円)で76%、1326億7100万ウォン(約140億円)で約77%と推計された。
最後に、ナム・インスン議員が代表発議した「人口総括部」設立法案も、人口危機を扱うコントロールタワーとして取り上げられている。
人口総括部もまた、大統領統括下に置かれる行政各部に追加され、同部の長官が人口政策の司令塔を担う。この法案では教育部長官ではなく保健福祉部長官が副首相となり、企画財政部長官と2人体制を構成するという点が差別化されている。
人口総括部についても、前出の2法案と同様に人員別のシナリオが示された。ただし、設置・運営に必要な追加財政推計では微妙な違いが見られた。
長官と次官以外の人員が441人である場合、今後5年間で1163億200万ウォン、年平均232億6000万ウォンが必要とされた。人員が多いシナリオでは1726億600万ウォン、年平均345億2100万ウォンがかかる。
総合的に見ると、人口問題コントロールタワーとして検討されている3つの省庁案のうち、「人口部」新設法案の追加財政規模が最も大きいと推定された。
同法案では人口部長官を副首相クラスに設定する内容が含まれており、人件費などの総予算が一つ目のシナリオで2700万ウォン(約285万円)、二つ目のシナリオで4億6600万ウォン(約4928万円)追加されると見られた。
一方で、人口未来部および人口総括部の設立に必要な予算は、各法案によって省庁を新設された際に投入される財政規模が同じように算出された。
李在明政権が実際にこれらのシナリオに基づき、新たな省庁を設立するかどうかは不透明だ。現在までに李大統領が人口政策に関して確定させた担当組織は、大統領室所属の「秘書官職」だけである。
李大統領が大統領室の組織改編を通じて示した人口問題への視点は、前政権とは異なるアプローチを見せたとの分析もある。
李大統領は尹前政権が新設した「少子化対応首席秘書官」を廃止し、「AI未来企画首席秘書官」を新設して、その傘下に人口政策を担当する秘書官職を置いた。
これは過去政権が人口問題を「福祉・家族」政策の一環として捉えていたのに対し、新政権ではAI(人工知能)や気候・環境といった「国家の未来」の課題として捉えたと解釈されている。
そのため、構造的な解決策に注力するという期待も一部で示されている。
(記事提供=時事ジャーナル)
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