“イラン空爆”で成功体験を積んだトランプ大統領、朝鮮半島にとっては「平和の兆し」とは限らないワケ

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中東戦線の砲声が、「一発の爆撃」によって静まり返った。戦争に一時停止をもたらしたのは、アメリカのドナルド・トランプ大統領だ。

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アメリカによるイラン核施設への精密空爆が行われた直後、イランとイスラエルは停戦を宣言。高まっていた戦争の気運をさらに大きな軍事行動で鎮めたことで、批判が相次いでいた「トランプ流リーダーシップ」も再評価されつつある。

問題は、トランプ大統領の「力による平和」戦略に勢いがつくことが、朝鮮半島にとっては「平和の兆し」とは限らないという点だ。

北朝鮮の核開発に対する正当化の口実がさらに強まったとの見方が出ているほか、韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権が受け取ることになる「防衛費請求書」の負担がより大きくなるという分析もある。

外れた「TACO予測」、トランプのイラン空爆は成功

トランプ大統領
(写真=トランプ大統領Instagram)

韓国国内だけでなく海外の政界関係者の間でも、アメリカがイランを空爆することを予想していた者は少なかった。

戦争が全面戦争へと発展すれば、これまでトランプ大統領が掲げてきた「アメリカ優先主義」と「紛争不介入の原則」に反することになるという見立てがあったからだ。

加えて、「MAGA(Make America Great Again)」支持層の間でも反戦世論が強まっていたことも、このような予測を後押しした。保守系メディアのフォックスニュースが6月18日(現地時間)に公開した世論調査によると、「イラン空爆は世界をより危険にする」との回答は59%にのぼった。共和党支持者の間でも、36%が否定的な反応を示していた。

これを受けて、トランプ政権1期目で国家安全保障補佐官を務めたジョン・ボルトン氏は6月19日(現地時間)、ドイツのドイチェ・ヴェレ(DW)とのインタビューで、トランプ大統領はイラン空爆に踏み切らないだろうと述べ、「安全保障の場面でも怖気づいて逃げ出す“TACO(Trump Always Chickens Out=トランプはいつもビビってやめる)”の瞬間が現れている」と主張した。

そして、「トランプのパターンを熟知しているイランは、交渉には応じないだろう」と見解を示した。

ボルトン氏は特に、トランプ大統領による軍事的圧力にイランは屈しないだろうと予測。「トランプ式の取引は不動産では通用するかもしれないが、外交では通用しない。軍事で脅せばイランが交渉に出てくるという考えは誤っている」とし、「イランは、攻撃を見送る状況を常に逃げ腰のトランプのパターンと受け止め、引き続き様子を見るだけになるだろう」と推測した。

しかし、「米軍が参戦すれば中東戦争が拡大し、トランプは攻撃を見送る」といった見通しは外れた。トランプ大統領は予想に反し、実際にイランの核施設に爆弾を投下し、結果的にイスラエルとイランによる停戦合意という成果を導き出した。

トランプ大統領は6月24日(日本時間)、イスラエルとイランが「完全かつ全面的な」停戦に合意したと発表した。

彼によれば、停戦は「両国の最終的な作戦実施(合意発表から約6時間以内)→イランによる12時間の停戦(対イスラエル攻撃の停止)→イスラエルによる12時間の停戦(対イラン攻撃の停止)」という3段階で構成されるという。

トランプ、“韓半島の損益計算”が慌ただしく

韓国国旗
(写真提供=OSEN)

問題は朝鮮半島だ。中東で成果を上げたトランプ大統領の「力を前面に出した外交」が、アメリカの対韓国・対北朝鮮政策にも影響を及ぼす可能性があるという見方が出ている。

特に政界では、同じく「核保有疑惑国」であるイランの屈辱的な敗北に、北朝鮮が危機感を抱かざるを得ないとの見方もある。

ただし、①北朝鮮はイランと異なり、すでに核ミサイルの開発に成功している可能性が高いこと、②アメリカが武力を行使すれば、ロシアや中国の介入が想定されること、③韓国政府の懸念などを踏まえれば、中東と朝鮮半島の状況を同列に扱うことはできないとの見解が大勢を占めている。

それでも今回のイラン空爆によって、米朝間の対話の可能性にとってはマイナス要因になったという分析は少なくない。北朝鮮の軍部が「核武器および武力強化戦略」にさらに傾注することになるという見方である。

国立外交院のミン・ジョンフン米州研究部教授は6月24日、CBSラジオのインタビューで「(北朝鮮にとっては)イランの現状が自らの未来になりかねないという認識があるはずだ」とし、「空爆自体は困難でも、北朝鮮としては“自国の価値を高める”口実ができた格好だ」と述べた。

続けて「アメリカは協議中であっても(イラン核施設への)空爆を断行したことから、北朝鮮としては、確実な見返りがなければ交渉に応じない姿勢を強めるはず」とし、「仮に北核協議が再開されたとしても、そのハードルは以前より高くなったと見なければならない」と分析した。

さらに、トランプ大統領によるイラン空爆が、韓国とアメリカ間の防衛費分担交渉にも間接的な影響を及ぼす可能性があるという見通しもある。中東で「力の効果」を体感したトランプ大統領が、防衛費問題でもより強硬な交渉姿勢を取る可能性が高まったという分析だ。

すでに北大西洋条約機構(NATO)加盟国は今回の首脳会議で、トランプ大統領が要求した「2035年までにGDPの5%を国防費として支出する」という計画に合意する予定だ。トランプ政権が同様の請求書を韓国に突きつける可能性は高い。

現在、韓国の国防費はGDP比で2.32%(約61兆ウォン=約6兆1000億円)であり、これを5%まで引き上げるには、年間約130兆ウォン(約13兆円)の防衛費増額が必要になる。

この日、ジョセフ・ユン駐韓アメリカ大使代理は、ソウル中区のプレスセンターで韓国言論振興財団主催の「韓米外交関係の展望と課題」セミナーに出席し、韓米駐留費を定めた防衛費分担特別協定(SMA)について「建設費、人件費、軍需費の3部門で構成されているが、その他の費用についてもどう分担するか議論が必要だ」と述べた。さらに「韓国の国防費支出が十分かどうかも、米韓間で議論されるべき事項だ」と付け加えた。

ユン大使代理は、「その他の費用」が具体的に何を意味するのかについて明らかにしなかったが、一部では「軍事建設費・軍需費・人件費」というSMAの3項目以外に、アメリカの戦略資産展開費用を含む「作戦支援費」項目などを新設すべきという趣旨ではないかという分析も出ている。

かつてトランプ政権1期目の2018年、米韓防衛費分担金交渉の際にも「作戦支援費」項目の新設を主張し、韓国政府に大幅な負担増を求めた経緯がある。

(記事提供=時事ジャーナル)

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