韓国でも通じる日本語は、実は少なくない。「おでん」「うどん」「刺身」などはその代表格だろう。
「すし」「さけ」などの単語が海外でも通じていることから名詞はなんとなく納得できるが、韓国では「お元気ですか?」という挨拶言葉も通じるそうだ。
実際に、2015年3月8日に放送された人気バラエティ番組『スーパーマンが帰ってきた』に、いまや韓国で家族そろって人気の格闘家・秋山成勲が出演した際のこと。北海道のスキー場で秋山と娘のサランちゃんに、妻でモデルのSHIHOが「お元気ですか?」と叫び、視聴者の笑いを誘ったという。
日本の人からするとかなり不思議な光景だが、これはとある映画を“パロッた”もの。「お元気ですか?」を韓国人の多くが知っているのには、ちょっと変わった理由がある。
その映画とは、約20年前、全盛期の中山美穂が主演した岩井俊二監督作『Love Letter』だ。
雪景色のなかにいる中山美穂が「お元気ですかー?」と叫ぶシーンは名シーンといえるが、いま日本でこのシーンをパロディする人は、ほとんどいないだろう。
ずいぶん前の作品にもかかわらず、しかも韓国でこれほど“特別な映画”であることは意外に知られていないかもしれない。韓国のネットには「韓国人が最も好きな日本人監督は岩井俊二」とまで書かれていたりする。
『Love Letter』が韓国で公開されたのは、1999年11月。
その前に、韓国で一般公開となった初の邦画は、ヴェネツィアで金獅子賞を受賞した北野武監督作品『HANA-BI』。同年に黒澤明監督の『影武者』も公開されている。
それに続いた『Love Letter』はファンタジックな内容ながら、より日本の日常のムードを感じられる作品だったのかもしれない。
一般的な韓国の人たちにとって、日本のファーストインパクト的作品こそが『Love Letter』だったのだろう。
黒澤映画も北野映画も邦画には違いないが、より“普通の日本”を想像させたであろう『Love Letter』。
動員140万人と当時としてはかなり異例の、そして日本を超える大ヒットを記録している。
岩井監督も予想だにしなかったであろうが、今でも韓国でパロディCMが作られるほど影響力があり、今でも韓国人の記憶に残る名作と位置付けられているほどだ。
「お元気ですか?」という言葉が一般的に浸透するほど、韓国で根強い人気を獲得した映画『Love Letter』。この機会に改めて作品を観賞してみるのもいいかもしれない。
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