韓国スポーツの中心地といえば、ソウルにある「テルン選手村」だろう。韓国代表の誰もが“通るべき場所”であるここは、韓国唯一の総合スポーツトレーニングセンターだ。
1966年に開村し、今年で開村50年を迎えたテルン選手村。建設されるきっかけになったのは、1964年の東京オリンピックだという。
当時韓国体育会長を務めていたミン・クァンシク氏は、オリンピックで大苦戦する韓国選手たちを見て代表選手専用練習場の必要性を痛感したそうだ。そこで、当時の朴正煕大統領を説得し、練習場の建設を推進したという。
テルン選手村の正門には、次のような標語が掲げてある。
「我々の道は遥かに遠い。しかし、必ず到達できる道だ」
トレーニング施設、体育館、宿舎などを含め全24棟の建物で構成されているテルン選手村では、そのはるか遠い道を歩もうとする約450人の選手たちが、国際大会の数カ月前から合宿練習を行っている。
韓国代表、もしくは代表候補に選ばれた選手たちが選手村で生活するために、まず行われるのが入村式だ。入村式では生活規範や人権、フェアプレー、ドーピングなどについて講義を受ける。そのあとは「食う・練習する」の繰り返しの生活が始まるのだ。
選手村で生活したことがあるという元選手が紹介した、一日のスケジュールは次のようだ。
まずは、全種目の選手たちが6時に起床し、エアロビクスと準備運動をする。その後、自主トレにうつる。最もトレーニングの時間の長い種目はボクシング、柔道、レスリングらしい。
自主トレのあと、朝食をとって10時30分からウェイトトレーニングを開始。そして12時にランチを食べ、一休みする。種目ごとに技術・戦術練習を行うのは15時30分から。
種目によって違うのだろうが、ウォーミングアップだけで30分を費やすこともあるそうだ。練習が終わって夕食を食べたら、20時30分からまた自主的にウェイトトレーニングをする。この時間を有効活用すれば、その分だけ成果が表れるのだとか。
一応、それなりの娯楽施設も設けてあるという。とはいっても、一日を終えてくたびれてしまった選手たちに、娯楽を楽しむ気力など残るはずもない。ここは、ひたすら“運動バカ”にならざるを得ない場所なのだ。
韓国スポーツは、テルン選手村によって支えられてきたと言っても過言ではなさそうだ。
(文=慎 武宏)
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