今年9月のことだ。とある週刊誌の記事が日本中を大きく騒がせた。有名な『週刊文春』の報道で、30代野球選手と20代女性のスキャンダルだったのだが、その内容が尋常ではなかった。
2人の仲は2年以上続き、そんななかで女性が妊娠をした。彼女は出産を望んでいたが、男性側が反対し、甚だしくは中絶を勧めた。ショックを受けた女性は極端な選択を試みたほどで、この過程を見守っていた女性の知人の情報提供によって世間に知られることになった。
事件は当事者間の合意でもみ消されたが、かといって噂が消えるわけでもない。周囲のひそひそ話は続き、彼が打席に立つたびにやじがこぼれた。しかし、スポーツ新聞や日刊紙、テレビの多くはおかしいくらいに静かだった。当事者が巨人の坂本だったからだ。
彼は巨人、いや日本プロ野球の看板だ。15年に渡り遊撃手の主力を担っている。安打数も2200本を超え、3000本到達も視野に入っている。まさにアイコンのような存在だ。そのため、『週刊文春』は「ほかのメディアが(巨人親会社である)読売新聞の顔色を伺って、報道をできずにいる」と分析した。
彼のスキャンダルは今回が初めてではない。2018年には、春季キャンプ地で自身の誘いを断った女性の肩や太ももを噛みつくなどの行動に出た。そこでも球団が乗り出して事件を隠ぺいした。示談金として550万円を支払ったという。
それ以前にも、坂本の女性問題をめぐって何度か情報提供があった。変態的な行為を強要したり、避妊ができないようにして苦しめたりしたという証言だった。
結局、人事措置が執られた。シーズンがすべて終わった後だ。8年間着けていた腕章を外すことになったのだ。原辰徳監督は、26歳の岡本和真にキャプテンを引き渡すよう指示した。「負担を減らして楽にプレーせよ」という意味に捉えられるが、「しっかりしろ」という訓戒にも映る。
侍ジャパンが巡航中だ。“超特級選手”が続々と合流したおかげだ。大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)に続きダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)がOKサインを出すと、鈴木誠也(シカゴ・カブス)も参戦を決めた。栗山英樹監督も「皆の決意が感じられる」と戦意を燃やす。
目標は「優勝奪還」、そして「打倒アメリカ」だ。マイク・トラウトやムーキー・ベッツ、ブライス・ハーパー、ノーラン・アレナドなど、豪華選手の揃う“ドリームチーム”と戦うにはベストなラインナップを組まなければならない。このため、坂本の存在は必須だ。攻守を兼ね備えた遊撃手だからだ。これまでも常に侍ジャパンの中心選手として活躍し、金メダルを獲得した2021年東京五輪のほか、2度のWBC(2013年、2017年)に出場した。
だが、今回ばかりは悩みが大きい。度重なるプライベートの問題のためだ。ひとまず1次選抜からは除外された。表向きには、頻繁な負傷による試合数不足(83試合出場)が理由だった。遊撃手には源田壮亮(西武ライオンズ)が選ばれた。
坂本の侍ジャパン選出是非をめぐっては賛否がぶつかっている。「いくら問題があったとしても、大舞台での試合経験が豊富で、代表で実績も優秀な坂本はプレーしなければならない」というのが擁護側の主張だ。逆に拒否感もはっきりしており、「WBCは全世界に野球を知らせる目的で創設された大会だ。アレルギー反応を起こす選手がプレーするのは適切ではない。除外するとしても名分は十分だ」と主張している。
栗山監督は言葉を慎み、世論を探っている。坂本を侍ジャパンに招集するべきか否か、あれこれと悩む時間は長くなりそうだ。
(記事提供=OSEN)