東京五輪に向けて1億3000万円をかけて作られ、2015年10月に東京都が発表した「&TOKYO」のロゴ。そこにパクリ疑惑が浮上して大騒動となったが、韓国でも同じ頃、ソウル市の新しいスローガンが「意味不明」だと酷評されていた。
その新しいスローガンとは、「I.SEOUL.U」。こちらの問題はデザインではなく、文法だ。
公式には「私とあなたのソウル」と韓国語訳されていて、「私とあなたの間にソウルがある」という意味を込めているそうだが、よく見る必要もないほど、文法的に間違っている。
本来 「I 〇〇 You」は、「私はあなたを〇〇する」と使われる。だから「I.SEOUL.U」の正しい訳は「私はあなたをソウルする」だ。
まるでグーグル翻訳にかけて出てきた誤訳のようなスローガンであるため、当然、外国人の反応はイマイチ。
テレビのインタビューに応じた外国人たちは、「何か包括的なメッセージなのは理解できるけど、パッと見ただけでは確かにわかりづらい」「英語圏の人には、I sold you.みたいな、“私はあなたを売った”というふうに聞こえる。いいスローガンとはいえない」「ちょっと普通じゃないね」と、失笑気味だった。
ソウル市は、14年間使ってきたスローガン「Hi Seoul」と「Soul of Asia」を捨て、心機一転、今回のプロジェクトを始動。だが、1年間という決して短くない期間と約8億ウォン(約8000万円)の予算をかけ、1万6000件に及ぶ市民からのアイデアや、10万人による投票、専門家の意見を合わせた結果にしてはあまりにも不評だった。
ネット上には「予算の無駄遣い」「変えた意味がない」「我々に恥をかかせる気か」など、非難のコメントが絶えない。
それどころか、新しいスローガンをネタにした皮肉も登場している。
「I.SEOUL.U = ソウル市が歌手のIUちゃん(韓国人歌手)に掌握された姿を表しています」
「I.SEOUL.U = お前を地下鉄に閉じ込めるぞ、という意味じゃね?」
「I.KOREA.U = 私はお前に死ぬほどの努力を強要する」
などなど。韓国のSNSは当時、新しいソウルのスローガンのパロディで持ち切りだった。
はからずもノイズ・マーケティングに成功してしまったソウル市は「文章としてではなく、ロゴとして見ていただきたい」と必死に訴えかけており、「たしかに文法は間違っているが、ニューヨークの“I・(ハートマーク)NY”やベルリンの“be Berlin”、アムステルダムの“I amsterdam”のように世界で十分通用するし、名詞と動詞の区分が曖昧な現代英語においてはむしろ洗練された表現」と説明するも、波紋はますます広がった。
見慣れればきっと受け入れられると、お偉いさんたちは信じていたようだが、現在になってもソウル市民の傷ついたプライドは回復していないようだ。
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