電通の新入社員だった高橋まつりさんが過労自殺した事件がまだ記憶に新しいが、実は韓国でも似たような悲劇が繰り返されている。
先日、国会で事務官を務めていた男性A氏が、2013年に自殺していたことが明らかになった。
彼が担当していた業務はほかでもない「自殺予防相談窓口の開設」。自殺を予防するための公務を行っていた担当者が自殺を選んだという皮肉な結末に、世間の注目が集まった。
A氏は仕事量増加に伴う不眠症やうつ病で苦しみ、1カ月で8キロも体重が落ちるほど健康状態が悪化していたという。
病気休暇を取って5日間休んでいたのだが、結局、休み明けの朝に自宅マンションのベランダから身を投げてしまった。
遺族は、A氏の自殺の原因が過酷な業務からのストレスだと主張。公務員年金公団に遺族補償年金を申請したが、公団は「自殺は公務とは無関係な行為」として、補償金の支給を拒否した。
しかし、最高裁が自殺は「公務上の災害」と認定したことから、国家公務員の勤務実態にあらためて関心が寄せられている。
昨年には、韓国最大手の総合エンタテインメント企業「CJ E&M」の新入社員B氏が過労自殺している。
入社9カ月で人気ドラマ『ひとり酒男女』のADとして働いていた彼は、過酷な業務やパワハラに耐えられず、ドラマの最終回が放送された翌日に自ら命を絶った。
B氏の弟によると、自殺する直前に上司が彼の両親を訪ね、1時間近くにわたってB氏の勤務態度の悪さについて苦情をぶちまけたという。B氏が残した録音ファイルやメッセンジャー履歴には、上司や同僚からの罵詈雑言があふれており、相当追い込まれていたようだ。
B氏はドラマ撮影の準備はもちろん、契約社員の契約打ち切りや契約金の回収など、ストレスを伴う業務を担当していたが、撮影が行われた55日間で、休みが取れたのはたった2日。
20代の悩みを描くドラマの制作現場で一人の青年が悩み苦しんでいたことに、多くの韓国人が怒りをあらわにしている。
経済協力開発機構(OECD)加盟国35カ国のなかでも、特に労働時間が長いと指摘されている韓国。
経済発展も大事だが、そのために国民が命を投げ捨てるようでは、なんの意味もないだろう。
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