韓国の食べ物の中で最も知られているのは、おそらく「キムチ」だろう。
昨年9月8日、韓国文化財庁は「キムチ漬け」の文化を国の無形文化財に指定する方針を固めた。「キムチ漬け」とは、韓国各地の特色あるキムチとその文化が含まれる概念だという。
キムチを広く宣伝しようという政府の思惑が伝わってくるニュースだが、そもそも韓国は、これまでもキムチをゴリ押ししてきた。
例えば韓国には、1000億ウォン(約100億円)以上の国家予算が投入された「世界キムチ研究所」なるものも存在する。
2010年に設立されたこの研究所では、キムチの微生物研究や可能性の研究などのほか、“キムチの世界化”のための研究も進められているという。
当然、キムチの輸出にも力を入れている。2017年上半期の輸出量を見ると、主要輸出国である日本(輸出量1位)と中国(2位)では需要が減っているものの、イギリスやオランダなどヨーロッパへの輸出は前年比18.2%増となっている。
韓国はなぜ、これほどキムチにこだわっているのだろうか?
理由のひとつは、キムチが韓国を代表するコンテンツとなっていることが挙げられるだろう。
実際、昨年9月に韓国観光公社が発表したところによると、2016年に外国人が主要検索エンジン(GoogleやYahoo!など)で検索した韓国関連キーワードの中で、「キムチ」は英語・ドイツ語圏では最も多く検索された。
ちなみに日本語での検索ワード1位は「K-POP」だったが、世界的に人気を集めているK-POPと肩を並べていることは、海外におけるキムチの知名度を示しているといえる。裏を返せば、韓国にはK-POPとキムチぐらいしか外国に輸出できる商品がないということでもあるだろう。
つまり、韓国はキムチを積極的に宣伝しているわけではなく、キムチに頼らざるを得ない状況にあるのだ。
ただ、それ以上に重要な理由は、韓国国内にある。年々、韓国人のキムチ消費量が減少しているのだ。
それはデータにはっきりと表れている。嘉泉大学食品栄養学科イ・ヘジョン教授チームの論文によると、韓国人1人当たりが1日に食べるキムチの量は、2005年に123.9gだったが、2015年には96.3gまで落ちている。とりわけこの10年間で、男性が17.8%減、女性は27.8%減となっている。
このように韓国国内で“キムチ離れ”が加速しているのは、キムチに対するイメージ悪化が一因だと考える向きもある。
例えば、韓国のネット上では韓国人女性を侮辱するときに「キムチ女」というスラングが使われているし、最近は、韓国メディアが外国人に対して「Do you know Kimchi?」と事あるごとに繰り返すアピールにうんざりしている若者も多いという。
「キムチ漬け」無形文化財指定に関する報道にも、ネット上では「本当にくだらない」「いつになったら“キムチの呪縛”から解放されるんだ」「韓国は“神格化”するのが好きだよね」「どこの国にも独自の食べ物はあるじゃないか。笑わせてくれる」といったコメントが見受けられた。
今も昔も、キムチをゴリ押ししてきた韓国。現状を見る限り、これからもキムチアピールは続きそうだ。
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