誰が、いつ、なんの目的で作った? ソウルの地下にある“秘密のシェルター”

2016年03月01日 社会
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誰がいつ、なんの目的で作ったのか、一切記録は残っていない。約40年もの間、韓国・ソウルの地下で眠っていた秘密のシェルターが、2015年10月に一般公開された。

ここは、2005年に行われた汝矣島(ヨイド)バス乗り換えセンター建設中、地下7~8メートル地点で偶然見つかったという。発見されるまで誰一人、存在を知らなかったこの場所は、1970年代の朴正煕元大統領時代に造られたと推測されるだけで、すべてが謎に包まれている。

後に「汝矣島地下秘密シェルター」と名付けられた同シェルターは、全体で約793平方メートル。3つの出入り口が存在する。

発見時、VIPルームと思われる部屋には、当時は高価だったであろう虎の毛皮のソファーが置いてあり、一般公開でもそれを再現。トイレやシャワー施設も設けられており、かなり金がかけられたことがわかる。「シェルターの建設は政府レベルで行われた」というウワサ話も、あながち間違いではなさそうだ。

誰がなんのために作った?

一般公開に踏み切ったソウル市は、地下シェルターが造られたのは1977年前後と推測。

市が管理する航空写真を確認すると、1976年11月の航空写真には写っていないシェルターの入り口部分が、翌1977年11月の写真には写っていたからだ。

そのため、シェルターの目的としては、「1977年の“国軍の日”(毎年10月1日)の行事の際に起こり得る、不測の事態に備えるため」という説が、最も有力視されている。

その3年前の1974年8月15日、朴元大統領は暗殺の危機に遭遇しているが、その時、外れた銃弾が妻の陸英修(ユク・ヨンス)氏に命中。愛する妻を亡くし、命の危険を感じた朴大統領が、警護用の秘密シェルターを造り上げたとしても不思議ではない。事実、国軍の日に査閲式が行われる場所と地下シェルターの位置が正確に一致している。もしこの説が本当なら、このシェルターは“韓国の独裁政権時代の遺産”ともいえるだろう。

ネット上には、「新たな都市伝説になりそうだな」「絶対行ってみよう」「シェルター建設の真実が知りたい」といったコメントが相次ぎ、謎のシェルターについて、興味津々だった。

ちなみに、この汝矣島以外にも、韓国にはいくつか地下秘密シェルターが存在するといわれている。

主に北朝鮮からの攻撃やクーデターに備えて造られたシェルターで、その場所も国家機密として一部の人にしか知らされていない。今回のように、シェルターを一般市民に公開するのは初めてのことだ。

ソウル市によると、2015年10月10日から11月1日までの期間限定で一般公開した後、原形を保ちながらリノベーションを行う予定だという。2005年に発見されて以降、施設化するなどいろいろな話があったが、収益などの問題ですべて破談に。2013年にはソウルの未来遺産に指定されたが、管理・活用がうまくいかず、ほぼ放置された状態で現在に至った。

ネット上には「リフォームして、もし戦争になったら、そのまま使えるようにすればいいのに」というやけに現実的な意見もあるが、とりあえず今後はアイディアを募集、市民のための文化空間として2016年10月に完全オープンさせることが目標らしい。

韓国に新たな都市伝説、いや、観光スポットの誕生である。

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