韓国のとある女性新人アイドルが、デビューして間もない中に意外な理由で話題になったことがある。
渦中の人物は、2018年10月にデビューした8人組カールズグループ「PINKFANTASY」(ピンクファンタジー)のメンバー、ハリンだ。愛らしいアイドルだが、日本はもちろん、韓国でもそれほど知名度は高くなかった。
しかし2018年11月6日、ハリンが所属事務所のインスタグラムに「もうすぐスヌン(大学受験)です! 高校3年生の方々、ファイト」というコメントとともに、自撮り写真をアップしたことで状況が一変する。
その自撮り写真には制服姿のハリンが写っていたのだが、本名が書かれた名札も写ってしまったのだ。
その本名が普通の名前であれば、それほど大きな話題にはならなかっただろう。ただ彼女の本名はなんと「パク・クネ」だったのだ。
韓国で、いや日本でも「パク・クネ」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、韓国前大統領の朴槿恵だろう。大統領から罷免され、収賄罪などで今も留置されている人物だ。
あどけない女性アイドルの本名が、罷免された前大統領と同じ。
なんともショッキングな偶然に韓国メディアも反応しており、「“一度聞いたら忘れられない”本名ひとつで関心を呼んだガールズグループメンバー」「不本意に“芸名”を使わなければならなかった女性アイドル」などと報じられた。
ハリンにとっては不運でしかないが、そもそも韓国には同姓同名が多い背景がある。
例えば、韓国最大のポータルサイト「NAVER」で「キム・ジョンウン」と検索すると、同姓同名の著名人が35人以上も表示される。
韓国女優キム・ジョンウンが以前、「名前を変えようかとずっと悩んでいました」とテレビ番組で明かしたことがあるほどだ。
仕事柄、韓国女子ゴルフ選手を検索することも多いのだが、日本で活躍する「キム・ハヌル」には同姓同名の女優がいるし、「イ・ボミ」にも同姓同名の筋肉女子がいた。
それどころか「イ・ジョンウン」にいたっては同姓同名の女子ゴルファーが6人もいるほどだ。
韓国に同姓同名が多い理由のひとつには、名字(姓)の少なさを挙げられる。
韓国統計庁の資料によれば、韓国で使われている名字は300近くあるが、1000万人近くいる「キム(金)」を筆頭に、「イ(李)」「パク(朴)」「チェ(崔)」「チョン(鄭)」の上位5つで、全人口の54%を占めているという。実際に使われている名字は、それほど多くないということだ。
さらに名前として使う人気の音もそれほど多くないため、結果的に同姓同名が多いという分析があった。
数年前に日本のテレビ番組で「韓国芸能人100人中99人が整形」と発言したカン・ハンナが韓国でも話題になったが、女優カン・ハンナと勘違いする人が少なくなかったそうだ。
いずれにしても、あまり連想されたくない人と同姓同名だったことで、逆に注目を浴びることになった韓国アイドルのハリン。ブレイクの良いチャンスも掴めれば良かったのだが…。
(文=慎 武宏)
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