しかし、あらゆる理由で遅刻しそうになる場合は、タクシー代わりにパトカーを拾っても大丈夫だ。警察はスヌンの日限定で“受験生輸送パトカー”を運営する。
「出勤ラッシュのため」「受験票を忘れてきた」「試験場を間違えた」など、受験生がパトカーを利用する理由は様々。大学受験のために警察がここまで協力するのは世界でも珍しく、今や韓国の名物と言える風景だろう。
ただ、緊急時でもないのに「パトカーに乗れるチャンスだから」「友だちに自慢できる」という理由で、わざとパトカーを拾う学生もいるらしい。スヌンの日はいつにも増して警察の苦労が絶えないそうだ。
スヌンの日には、役所に勤める公務員の出社時間が9時から10時と遅くなる。受験生たちのラッシュ時に混雑を防ぐため、出社時間を延ばす企業も多いとか。
また、電車やバスの運行回数も大幅に増大し、騒音防止のために飛行機の離着陸も調整。社会全体が受験生のために回っているような特別な日である。
試験場へ持ち込めるのは、試験に必要な鉛筆、消しゴム、アナログ時計など。
ただし、携帯電話やスマホ、デジカメ、電子辞書、スマートウォッチ、電卓、ラジオ、デジタルメディアプレイヤー、LED時計などは持ち込み禁止だ。
ところが、一つ注意しなければならないのが、シャーペンである。シャーペンの芯(0.5mmのみ)は持ち込めるが、本体は持ち込めない。
シャーペンによる不正が多かったため、2006年からいわゆる“スヌンシャーペン”という特殊制作したシャーペンが試験場で配られるようになった。
毎年違う色のシャーペンが支給されるため、コレクションとして集める人もいるとか。毎年のようにニュースで紹介されるのが、熱心に祈る親やエールを送る後輩たちの姿だ。
スヌンは受験生の子供を持つ親にも一大事。お寺や教会で祈るのはもちろん、スヌン当日は試験が終わるまでソワソワしながら外で待機する人も少なくない。
後輩も同じだ。我が校の先輩たちのため、朝一で試験場の前に集結。お茶やコーヒーなどを用意し、先輩受験生に配りながら元気よく「頑張ってください」と声をかける。学校によっては前もってスヌン・イベントを行うところもある。
今度のスヌンの日にも、韓国人は受験生の健闘を祈って全力で協力するのだろう。
(文=サーチコリアニュース編集部)