韓国経済誌『時事ジャーナル』が選ぶ「今年の人物」には、時代精神が込められている。
【注目】旧統一教会、トランプ、日本…世界に広がる「政教癒着」の影
2025年の大韓民国という巨大な盤面を支え、動かしている人物たちは、果たして誰で、何を意味するのだろうか。いま韓国を動かしているという言葉は、民心に最も速く敏感に、そして国民が最も強く望む方式で反応しているという意味だ。
そのダイナミックなエネルギーの流れを綿密に読み取ることができるなら、私たちは時代的要求を把握できる。何よりもそこには、大韓民国の希望と課題が込められている。
大韓民国を貫く滔々(とうとう)たる民心の流れと時代精神を示す人物たちを見ていくことは、だからこそ重要だ。そしてその過程は、時代像を写し取る作業でもある。
本サイト提携メディア『時事ジャーナル』が1989年の創刊以降、37年目にわたり「今年の人物」を選定してきた理由がまさにここにある。『時事ジャーナル』は読者のアンケート調査、編集局記者の投票などを基に、綿密な検証と討論を経て今年の人物を選定した。今回は「2025年の国際人」として、アメリカのドナルド・トランプ大統領を紹介したい。
2年連続で『時事ジャーナル』の「今年の国際人」に選ばれたドナルド・トランプ。本誌読者と編集局は、2024年に続き2025年も、世界を最も激しく揺さぶった人物としてトランプ大統領を選出した。
大統領選の遊説中に銃撃を受けるという衝撃的な事件を乗り越え、支持層の結集を導いた彼は、特有の政治的生存本能によって4年ぶりにホワイトハウスへ復帰した。
銃弾を避けて戻ってきたトランプは、より荒々しく世界秩序を揺さぶり始めた。アメリカ第一主義、同盟の再編、高率関税、ウクライナ終戦への圧力まで。国際社会全体が再びトランプの名の下で揺れ動き、今も揺れ続けている。
トランプの再選は、単なる政権交代ではなかった。現職副大統領と元大統領が激突するという異例の大統領選は、衝撃そのものだった銃撃事件、前代未聞の候補交代、最高裁判決など、空前の出来事の連続で彩られた。
共和党候補として臨んだ彼は、選挙期間中に2度の暗殺未遂を経験し、そのうち1度は耳に銃創を負い、血を流した。四方から悲鳴が上がるなか、トランプは演壇に上がり、空に向かって拳を突き上げ「戦おう(Fight)」と叫んだ。この場面は世界中に生中継され、その瞬間、トランプは再び「不死身の政治家」として浮上した。
そうして2025年1月20日、トランプは再びホワイトハウスに入った。
「任期中、1日たりとも欠かさずアメリカを最優先にする」
就任式でのこの宣言は、単なる修辞ではなかった。その後、彼の政策は息つく暇もなく打ち出された。
最初の標的は不法移民だった。教会や学校といった敏感な空間にまで公権力が投入され、強制送還政策は全米へと拡大した。『ロイター通信』などによると、米移民税関捜査局(ICE)はトランプ就任後50日間で3万人を超える不法移民を逮捕したという。トランプの「アメリカ第一主義」は、もはやスローガンではなく現実となり始めた。
経済と安全保障をめぐる同盟再編も容赦なかった。トランプはカナダ、欧州連合(EU)、日本などの伝統的同盟国を通商再交渉のテーブルに引きずり出した。高率関税は予告で終わらず、いわゆる「請求書外交」が本格化した。
韓国も例外ではなかった。鉄鋼や自動車をめぐる相互関税の応酬、防衛費分担金交渉は容易に解決しなかった。韓国は、どこへ転ぶかわからないトランプの心を開くため、あらゆる手段を動員した。
勲章法上、韓国最高位の勲章である「無窮花大勲章」を初めて米国大統領に授与し、特注の金冠模型まで贈った。そうして10月、慶州で開かれた韓米首脳会談は、辛うじて劇的な妥結に至った。
行政府内部でも「トランプ式改革」は止まらなかった。
トランプは「小さな政府」を掲げ、政府効率部(DOGE)を新設し、そのトップに選挙期間を通じて自身を支持してきたイーロン・マスクを指名した。まさに破格だった。
マスクは当初からスピードを上げ、連邦公務員1万人を解雇し、NSA(国家安全保障局)やCIA(中央情報局)といった中枢情報機関を自ら訪ね、組織改編と人員削減を協議した。マスクは1750億ドルの予算を節減したと主張したが、それを裏付ける会計資料はどこにもなかった。結局、トランプとの公然たる対立の末にマスクは辞任し、政府効率部は静かに幕を閉じた。
トランプ式社会政策の方向性は明確だ。減税、そして福祉削減である。
問題は常に金だ。減税で失われた税収を補うため、最終的に手を付けたのが福祉予算だった。
最初に標的となったのは「メディケイド(低所得層医療支援)」である。低所得層だけの福祉のように見えるが、実際には米社会で最も脆弱な層を支えるセーフティネットだ。特に障がい者とその家族のための在宅介護サービス(HCBS)は、この制度なしには存続できない。
ところがトランプ政権は、この予算を1兆ドル(約1400兆ウォン)規模で削減すると宣言した。米医療研究団体カイザー・ファミリー財団(KFF)によれば、当該サービスの受給者は全米で450万人に上る。『ニューヨーク・タイムズ』は「障がい者と家族の支えだったメディケイドサービスが、従来水準を維持できなくなった」と報じた。
皮肉なのは、メディケイドへの依存度が高い地域が、共和党の代表的な地盤だという点だ。例えばミズーリ州では、住民5人に1人がメディケイドに頼って生活している。トランプの刃先が、いつ自らの支持層に向かうのか、誰にも断言できない。
トランプの視線はいま、国境の外、ウクライナへと向かっている。彼はクリスマスを終戦期限と定め、ウクライナに事実上の最終通牒を突きつけた。アメリカがNATO式の安全保障を提供する代わりに、戦争を終わらせようという条件だ。
武器支援や監視体制、米国の安保関与まで含む「プラチナ級の提案」だとしたが、現実は簡単ではない。ドンバスの領土問題はいまだ接点を見いだせず、ロシアはNATO介入自体を受け入れられないという従来の立場を堅持している。ウクライナも領土譲歩はあり得ないとの立場だ。外交筋では、今回の提案はトランプ式の「成果演出」に過ぎず、無理な圧力だとの評価も出ている。
それでも内外の反発を押し切ってトランプが速度を上げる理由は、政治日程にある。最近の『ウォール・ストリート・ジャーナル』とのインタビューで、彼は来年の中間選挙について「必ず勝つとは楽観していない」と明かした。歴代大統領の多くが中間選挙で苦戦してきた点を意識した発言だ。
それでも「私は歴史上最も偉大な経済を作った」と自負しつつ、その成果が民意につながるまでには時間がかかることも認めた。結局、時間が足りないとの判断の下、有権者が体感できる成果を生み出そうとする焦りが、強硬な統治スタイルにつながっているとの分析が出ている。
しかし、外交舞台での強硬姿勢とは対照的に、国内政治では次第に亀裂が見え始めている。トランプ大統領が民主党系の州に州兵を投入するという強硬構想を押し進めると、与党内からも反発が出たためだ。
共和党のロジャー・ウィッカー上院軍事委員長は、大統領指示で進められた民主党議員の軍事裁判の試みについて「正当性がない」と公然と歯止めをかけ、上院公聴会に出席した現役4つ星将軍は「内部の敵はいない」と述べ、大統領の安全保障フレームを正面から否定した。
トランプは政治的反対勢力を「敵」と規定し、軍まで動員しようとしたが、軍首脳部は憲法と法律に基づく判断を強調し、事実上の抗命に近い立場を示した格好だ。反対の声はいまや野党を超え、与党と軍内部からも噴き出している。
2025年は、ドナルド・トランプという指導者個人の復帰を超え、アメリカの保守主義が再び制度圏を掌握した年として記録されるだろう。
彼の2期目は、より速く、より鋭く、より予測不可能だ。そしてその余波はアメリカ国内にとどまらない。
貿易、安全保障、外交全般にわたって「トランプリスク」が再び頭をもたげ、私たちが知っていた世界は、またしても激しく揺れ動いている。
(記事提供=時事ジャーナル)
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