韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領夫人であるキム・ゴンヒ氏が、持病を理由に6月16日より病院に入院した。キム・ゴンヒ夫人は今月13日にも病院で診療を受けており、病状は重篤な状態ではないと伝えられている。
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韓国の法曹界では、特別検察(以下、特検)がまもなく発足するという状況でキム・ゴンヒ夫人が突然入院したことは、捜査の遅延を狙ったものと受け取られかねないと見ている。
キム・ゴンヒ夫人の入院が長引けば、特検は任意捜査しか行えないため、捜査を回避する目的に見える可能性があるからだ。
検察は、被疑者が容疑を釈明できない段階に至ってはじめて、逮捕などの強制捜査を行うことができる。そのため、キム・ゴンヒ夫人の入院が合理的な理由によるものかどうかを、特検が確認する必要があるという見解もある。
法務法人イルロのチョン・グスン代表弁護士は「(キム・ゴンヒ氏の奇襲的な入院は)捜査機関の出頭要求に応じない可能性が非常に高い事例と見られる」とし、「令状が発付される可能性を高める行為だ」と話している。
キム・ゴンヒ夫人の入院が有利に働く可能性はあるのだろうか。
法曹界では、戦略的な側面でキム・ゴンヒ夫人に利点があることもあり得ると見た。キム・ゴンヒ夫人が長期入院すれば、検察は任意捜査しか行えず、書面での調査に応じる形になるため、検事による追加尋問を防ぐことができるというわけだ。
元検事のアン・ヨンリム弁護士は「書面で回答すれば、検察はまとまりのない答弁しか受けることができない。実体的な真実の発見が難しくなるという意味だ」と指摘した。
また、検事や捜査官がキム・ゴンヒ夫人の入院先を訪れて調査を行ったとしても、検察庁ではない空間であるため、心理的に萎縮しない状態で供述できるという点も利点と見なされる。戦略的に“悪手”とは言い切れないということだ。
キム・ゴンヒ夫人の入院という“変数”により、ミン・ジュンギ特検は新たな課題を背負うこととなった。
キム・ゴンヒ夫人に対する強制捜査に踏み切るのか、それとも書面調査や出張調査で代替するのかを決定しなければならないためだ。
ただ、刑事事件を専門とするキム・テリョン弁護士は、「例えキム・ゴンヒ夫人が(自身に対する特検発足に)ショックを受けて、一言も話せないほどの状態になったとしても、捜査を免れることはできない」と話した。
これまで検察がキム・ゴンヒ夫人に対して強制的な召喚調査を行わなかったのは、それなりの理由があった。
キム・ゴンヒ夫人が大統領夫人だった当時は、その身分を考慮して強制調査を行わなかった側面がある。
しかし、現在は状況が異なる。尹前大統領がいち私人となったことで、キム・ゴンヒ夫人の弁護団は捜査機関の要求する資料を積極的に提出すべき立場となった。当然、検察の書面質問などに対しても誠実に陳述しなければならない。
仮にこれらをすべてキム・ゴンヒ夫人の弁護団が履行していたのであれば、検察が強制捜査の必要性を感じなかった可能性もあるというのが法曹界の分析だ。捜査機関の法的判断と国民の目線には乖離があるという意味である。
今後、特検が真相究明を迅速に進め、結論を出すことが国民統合のために重要だという点には、多くの法曹関係者が同意している。
そのためには、キム・ゴンヒ夫人の捜査に関与してきた各機関と事件関係者たちが最大限協力する姿勢が求められると助言している。
(記事提供=時事ジャーナル)
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