日本でロングランヒットを誇り、世界各地でも大ヒットしたサッカー漫画の金字塔『キャプテン翼』。韓国でも『ナルアラ(翔べ)、キャプテン』というタイトルで、1996~1998年にソウル文化社から翻訳出版されているが、大ヒットすることはなかった。
その理由はさまざまなだが、『キャプテン翼』が翻訳出版された時代に強力なライバルが存在したこととも無関係ではないだろう。
そのライバルとは『蹴球王シュットリ』である。1993年から韓国のテレビ放送局SBSで放送されたアニメ番組で、当時は1994年アメリカW杯のアジア予選最中だったこともあって高視聴率を誇った。
同作に影響を受けてサッカーを始めたというKリーガーも多い。サッカー好きで知られるアイドル、BEASTのユン・ドゥジュンも「シュットリを見て育った」と公言するほど。まさに韓国の『キャプ翼』なのだ。
ストーリーはこうだ。
幼い頃から天才的なサッカーセンスを誇った主人公シュットリは、世界最高の選手になるべくイタリアに渡るが、名門クラブに入団できず弱小チーム“コロンブス”で活躍する。
そんな中、両親を飛行機事故で失い、サッカーこそ自分の人生のすべてだと悟ったシュットリは、伝説の選手アルバートの指導を受けながら数多くのライバルたちと対戦して成長を重ね、やがてヨーロッパサッカー界で素晴らしい活躍を遂げていく・・・・・・。
そんな内容なのだが、実はこの『シュットリ』は韓国のオリジナル漫画ではない。ストーリーを聞いてピンと来る者もいるだろうが、元は日本のアニメなのだ。
そのアニメとは『燃えろ!!トップストライカー』。1991年10月から1992年9月までテレビ東京系列で放映されたテレビアニメだ。
主人公の名前は吉川光。ただ、韓国版では「シュート」と「ドリ(男の子を表すときに使われる固有語)」を組み合わせて「カン・シュットリ」という名前に変えられ、そのほかの登場人物も韓国名。恩師アルバートも本来はロブソンという名前だった。
韓国では、この『蹴球王シュットリ』が実は日本のアニメだったということを知る者が少ない。 「シュットリ」という言葉は今でもサッカー少年を表す言葉として使われ、KBSの人気バラエティ番組『ハッピーサンデー』では、平凡なチビッ子たちを集めたサッカーチームの成長を記録した『ナルアラ(翔べ)、シュットリ』というコーナーもあったほどだ。
ちなみにそのチビッ子たちの指導に当ったのは、元韓国代表でJリーグでもプレーしたユ・サンチョルだった。
韓国では今でも『キャプ翼』を凌ぐ人気と知名度を誇る『蹴球王シュットリ』。それが実は日本のアニメだったというのだから、面白い。
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