その出来事が起きたのは、2006年3月15日に米エンゼル・スタジアムで行われた2次ラウンドの韓国対日本。試合は熾烈な投手戦の末に韓国が2-1で勝利したのだが、終了直後、韓国の投手ソ・ジェウンがマウンドに太極旗(テグッキ/韓国国旗)を挿した姿が大きく話題になった。
そもそも、3日前のメキシコ戦で先発登板していたソ・ジェウンは日本戦で登板機会がなかった。だが、当時25歳の右腕投手は試合が終わるやいなや仲間のもとに駆け付け、勝利の喜びを分かち合った。そして、チームメイトがグラウンドを後にするなかマウンドに一人残り、丁寧に土を掘って太極旗を突き立て、最後は嬉しそうに旗にキスをした。
この様子をダッグアウトで見つめていたイチローは試合後、「野球人生で最も屈辱的な日」と憤りを隠さなかった。ただ、当のソ・ジェウン自身は日本の反応を気にしておらず、“国旗立て”についてこう語っている。
「日本の選手の気持ちまで考えていなかった。その日は自分たちが祝う意味で太極旗を掲げたもので、日本の反応は気にしない。自分も最善を尽くしたし、日本も最善を尽くした。どのチームが勝っても、勝者は祝賀パーティをして、敗者は頭を下げて出ていくだろう」
ただ、最後に笑ったのは日本だった。両国が再び相まみえた準決勝では日本が6-0で完勝。韓国は“国旗立て”当事者のソ・ジェウンが先発で好投を見せるも後続が続かず、リベンジに遭う形に。結局、決勝でキューバを破った日本が見事初代王者に輝いた。