韓国メディアを代表する“三大紙”といえば、『中央日報』『朝鮮日報』『東亜日報』だ。
そのなかでも、『朝鮮日報』は韓国で最も歴史の長い新聞で、発行部数は国内最大の約230万部を誇る。民族主義・保守主義を前面に押し出した論調から、韓国の既得権者である中高年層を中心に支持されている国内最大メディアだ。
だが、その『朝鮮日報』の公式フェイスブックが「下品すぎる」と非難の声にさらされている。
近年は若年層の読者獲得とソーシャルコミュニケーション隆盛の時流に乗り遅れまいと、「ソーシャルメディアチーム」という新部署を設けて、フェイスブックを活用した展開も強化。この6カ月あまりで公式FBが「いいね!」された数は18万件近く増加し、1月15日時点で、そのファン数は332万8246人にも上る。
韓国のとあるメディアが調査した国内30社の公式FB統計によると、各報道機関の公式FB平均ファン数は16万弱。『朝鮮日報』はFB市場でも大勢の読者層を抱えているわけだが、その情報発信の手法が「下品すぎる」と批判されている。
例えば2015年12月29日、「父親にいやらしい自撮り写真を送ってしまった娘」という自社記事をFBで紹介するにあたって、「ノーモバージョンを見たい場合は?」と付け加えた。
「ノーモ」とは、「ノーモザイク」の略語だが、大手メディアが運営する公式FBとしては不適切な表現だと指摘された。
さらに今年1月には、北朝鮮の水爆実験に対抗する形で再開された拡声器放送の速報記事を紹介するにあたり、「最初の曲のリクエストを受け付けます。書き込みを残してください」とはやし立てた。同10日にアメリカの爆撃機B52が韓国を低空飛行したことを知らせる記事に関しては、「飛んだ、飛んだ、核爆撃機~、飛ばせ~!! 飛ばせ~!!」と悪ノリする始末。
深刻なニュースさえも茶化して紹介する手法に、「悪ふざけにも程がある」「センスもユーモアもない。メディアとして守らなければならない、社会的責任感はないのか」と、一部のメディア関係者や読者たちから批判されているのだ。
ただ、そんな声にも『朝鮮日報』は動じない。
同紙の社報によると「公式FBは自前のニュースコンテンツを気が利いて感覚的な言葉で紹介していることや、管理者が直接書き込むリアルタイムのコメントで人気を博している」と、分析しているようだ。
『朝鮮日報』としては、FBの利用頻度が高い若年層を取り込むために、あえてブラックユーモアも辞さない覚悟のようだが、品がなく、やりすぎ感が否めない手法はメディアとしての信頼性を損なう危険性もはらんでいる。
FB関連著書がある韓国の有名研究所所長も「『朝鮮日報』はユーモアを駆使して“いいね!”を増やしているが、それは炎上する危険もある。同紙が若い読者層に接近したいなら、彼らが共感できるコンテンツ作りに注力すべき」と指摘する。
はたして『朝鮮日報』はこうした指摘をどう受け止めるのか? 悪ノリがすぎなければいいのだが……。
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