韓国で、“遠征売春”が問題となっている。
『シアトルタイムズ』は今年7月26日付の報道で、昨年1月に逮捕された売春斡旋グループが韓国で経済的に困窮している女性たちを勧誘し、シアトルなどアメリカ北西部で売春をさせていたと伝えている。
彼女たちは自由が与えられない環境で、一日5~10人を相手にしていたという。料金は1時間当たり300ドル(約3万3000円)で、そのうち100ドルは斡旋グループに渡り、200ドルが彼女たちの取り分だったとされている。
この事件は韓国で物議を醸しており、韓国メディア『韓国日報』は「在米韓国人社会に泥を塗った」と報じている。
もっとも、韓国の女性が“遠征売春”を行うのは珍しいことではない。
2010年10月の国会国政監査でキム・オギ議員は「韓国人女性10万人余りが海外で遠征売春を行っている」と発言している。
彼女によれば、“遠征売春”を行う韓国人女性は、日本に5万人、オーストラリアに2500人、グアムに250人、その他ニュージーランド、中国、香港、アメリカなどを合わせて10万人に達するのだという。
また、今年3月には「アメリカの公式統計によれば、(アメリカ国内の外国人売春婦の中で)遠征売春に来た韓国女性たちの割合は23.5%」という報道も出ている(『NEWSTOWN』)。これはアメリカの外国人売春婦の中で最も多い割合で、2位のタイ(11.7%)、3位のペルー(10.0%)にも大きく差を付けている。
国際犯罪の中でも売春の多さは目立っている。
2015年8月に韓国警察庁が発表した報告書「国際犯罪集中取り締まりの結果」によると、同年7月6日~8月25日までの50日間に発生したパスポート偽造・変造不法出入国などの国際犯罪の中で、売春に関連する犯罪が最も多かったらしい。
具体的な内訳は、外国で売春をした韓国人女性、国内で売春をした外国人女性などで、外国で買春をした韓国人男性も含まれていた。
当時、警察関係者は「外国での売春は国家イメージの失墜につながる」としながら、「国家機関間の協力を通じ、ビザ発給要件と入国審査を強化する対策が重要」と強調していた。
それでも冒頭の事件のように現在も海外での売春は続いているが、どうして韓国人女性は“遠征売春”をするのだろうか。
その背景には、経済的な困窮があることは間違いないだろう。
例えば昨年には経済協力開発機構(OECD)が韓国の青年失業率(15~29歳)を10.7%と発表している。2012年から右肩上がりとなっており、日本の5.2%と比べても倍以上の数字だ。
しかも韓国は男女賃金格差も大きい。『女性新聞』の報道によれば、2016年の男女賃金格差は36%で、日本(27%、厚生労働省発表)を含めたOECD加盟国の中で最も格差があった。
また、「性売買特別法」の施行によって国内での売春が難しくなったことも影響していると考えられる。
2004年9月23日にこの法律が施行され、取り締まりが強化されたことによって、性産業の売上は大幅に縮小している。刑事政策研究院の「性売買経済規模全国調査」によると、2002年当時の性産業の総売上額は24兆ウォン(約2兆4000億円)だったが、2010年には6兆8600億ウォンと約70%も減少している。
こうした状況が売春の舞台を国内から海外へ移らせたという指摘がされているのだ。実際、2009年の海外性売買の関する検挙者数は128人だったが、2013年には496人と4倍近くまで増加している。
失業率や男女賃金格差などの問題が解決されない限り、今後も遠征売春は続いてしまうのかもしれない。
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