韓国の通貨である「ウォン」の価値は、約0.10円。つまり、10ウォンの価値がだいたい1円くらいだ。
韓国の硬貨は最大の500ウォンでも50円ほどの価値しかない。物価ほとんど日本と同じであるため、韓国では基本的に紙幣がメインとなる。「最後に10ウォン硬貨を使ったのがいつか思い出せない」と話す人までいるほどなのだそう。
2015年11月3日、それほど存在感の薄い10ウォン硬貨をめぐる驚きの事件が発覚ている。硬貨を溶かし、銅を抽出して、2億ウォン(約2000万円)近い利益を得た8人が、韓国銀行法違反容疑で立件されたのだ。
実は韓国の10ウォン硬貨は、実は1966年の誕生から、1983年と2006年の2回にわたって、素材が一新されている。前出の事件でターゲットになったのは、1983年製造の10ウォン硬貨だ。
“2代目10ウォン硬貨”は、直径22.86ミリ、重さ4.06グラム。
その成分は銅が65%、亜鉛が35%と、銅の比率が非常に高い。通貨としての価値は10ウォンなのだが、溶かして銅を抽出した場合、10ウォン硬貨1枚で25ウォン分の価値があるという。
そこに目をつけたのが、融解工場を営むイ容疑者(57歳)。彼は仲間を集め、2015年5~10月にかけて、2代目10ウォン硬貨を600万枚(総重量24トン)も集めたのだ。
逮捕につながった経緯は、実に間抜けなものだ。なんと、イ容疑者とその仲間たちは、3代目10ウォン硬貨を袋に詰め込み、2代目10ウォン硬貨と取り替える作業を全国各地の銀行で行っていたのだ。
そんな怪しい客がマークされないわけがないだろう。イ容疑者たちは、間もなく御用となった。
一連の報道を聞きつけた韓国ネット民の反応は、意外なものだった。
「この事件、何回起きてるんだよ。刑罰が甘いから、こうなるんだ」
そう、実はこの「2代目10ウォン硬貨から銅を抽出する」という事件は、昔から何度も起きていて、なかには5億ウォン分の10ウォン硬貨を溶かして、12億ウォンを荒稼ぎした者もいた。
それどころか今回逮捕されたイ容疑者は、2014年にも同様の事件を起こして逮捕されていた。韓国銀行法では鋳造した硬貨に意図的に傷をつけた場合、6カ月以下の懲役、または500万ウォン以下の罰金が科される。前回の事件でイ容疑者に下された判決は、懲役4カ月と、かなり甘いもの。捕まっても大した罪にならないと実証した上での再犯だったわけだ。
韓国銀行の発表によると、2015年1~9月の間に流通した2代目10ウォン硬貨は合計16億ウォン分あるが、そのうち銀行に戻ってきた額は1億ウォン分にも届かなかったという。
10ウォン硬貨が誕生した1966年当時、10ウォンもあれば、おなかいっぱいのパンを買うこともできたという。しかし、今では飴玉1つを買う価値もない。誕生から50年になるが、その存在感は希薄になるばかりだ。
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