性行為動画の拡散を盾にした脅迫も…韓国で深刻化するストーキング犯罪 “スマホ普及率世界一”の闇

2025年08月18日 社会 #時事ジャーナル
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交際相手からの暴力やストーキング犯罪が、韓国で深刻な社会問題に発展して久しい。

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事件が発生するたびに、政府当局は制度的補完や被害者保護を大々的に掲げてきたが、加害者はあざ笑うかのように同様の犯罪を繰り返しているのが現状だ。

最近では複数の場所で同時多発的に発生している。多くの被害者は自ら危険を察知して警察に助けを求めたが、結局は防げなかった。一体どれほど多くの女性が犠牲になれば、この悲劇の輪を断ち切れるのだろうか。

相次いだ殺害事件

今年7月26日、京畿道義王市龍賢洞の老人保護センターで勤務していた50代女性Aさんが刃物で刺され死亡した。彼女は過去3回にわたりストーキング被害を訴えていた。

警察は同僚の60代男性Bを容疑者と特定。現場の防犯カメラに映った姿から追跡したが、翌日、首を吊った状態で発見され、自ら命を絶ったと判断された。Aさんはスマートウォッチを所持していたが着用しておらず、危険時に通報できなかったとされる。

韓国では、身辺警護が必要な人には、警察から位置情報の把握や通報用のスマートウォッチが支給される。

女性を襲う男性
(写真=PhotoAC)イメージ

事件の2日後、28日には蔚山の病院駐車場で30代男性Cが交際相手の20代女性Dさんに刃物で重傷を負わせた。Cは以前から暴行やストーキングで警察の調査を受け、電話168回、メッセージ400通を送っていたが、検察への保護措置申請は相次いで退けられ、結局Dさんは無防備な状態で被害に遭った。

さらに29日、大田では30代女性Eさんが元交際相手のチャン・ジェウォン(26)に殺害された。チャンは数カ月前から犯行を計画し、殺害後には遺体安置所を訪ねて確認しようとするなど、異常なまでの執拗さを見せた。警察は異例の措置として実名と顔写真を公開した。

悪質化するネットストーキング

問題はストーキングが現実にとどまらず、ネット上でも公然と行われていることだ。被害者のスマートフォンにスパイウェアを仕込んで24時間監視する、位置追跡アプリで行動を把握する、SNSでデマやディープフェイクを拡散する、大量のメッセージを送りつける、性行為動画を拡散すると脅すなど、手口は多様化している。

2016年の「松坡事件」では、被害女性が「動画を流す」と脅され通報をためらった末に命を落とした。2018年には元夫が車にGPSを仕掛けて居場所を特定し、出待ちしていたところを襲い、命を奪うという事件も起きた。

2013年には教師が元教え子から400通以上の脅迫メールを受け、SNSで「必ず殺す」といった書き込みまでされ、最後は殺害される痛ましい事件もあった。

これらの事件には共通点がある。異常な執着、過剰な支配欲、日常生活の統制、別れに対する無条件の憎悪などだ。加害者は「相手の心を取り戻す」という名目であらゆる手段を用い、最終的に相手が命を落とすまで終わらなかった。

法の限界と制度的課題

7月31日、龍山(ヨンサン)の大統領室前に集まった女性市民団体がストーカー犯罪関連対策を促す記者会見を行っている様子
(写真=女性団体「韓国女性の電話」)7月31日、龍山(ヨンサン)大統領室前に集まった女性市民団体がストーカー犯罪関連対策を促す記者会見を行っている様子

韓国女性政策研究院の学術誌『女性研究』に掲載された論文「見えない監獄:技術媒介による強圧的統制とストーキング」によれば、ネットストーキングは物理的暴力がなくても被害者に強い支配と苦痛を与えると指摘している。監視や統制がネット上で行われるため法的対応が難しく、被害者は無力感を抱くという。

GPSによる追跡も、現行法では「情報保護法違反」とされ、ストーキング処罰法で裁くことが難しい。スマートフォン普及率世界一の韓国だが、テクノロジーを悪用したストーキングへの対応は後手に回っているのが現状だ。

2023年7月の法改正でようやく「個人情報のSNS拡散」も処罰対象に加わったが、統計整備も不十分で初歩的な段階にとどまっている。

司法当局は事件が起こるたびに対策を発表するが、その場しのぎの“応急処置”にとどまり、根本的な予防策としては不十分との批判も強い。

警察は「関係性犯罪総合対策」を打ち出し、接近禁止中の加害者周辺に機動巡察隊を重点配置する方針だが、さらに持続的で実効性ある統制が必要だ。検察も「ストーキング仮処分改善策」を掲げているが、判断の甘さが繰り返されれば被害者を守り切れない。

現在、国会には「ストーキング処罰法」改正案17件、「ストーキング防止法」2件の計19件が上程されている。徘徊や待ち伏せ行為を新たにストーキング行為に追加する内容も含まれるが、依然として委員会審議にとどまっている。

(記事提供=時事ジャーナル)

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