韓国で政府の主要省庁、公的機関、大企業などにおいて、障がい者雇用の「義務雇用率」が全般的に守られていないことが分かった。このため、障がい者の雇用率を高めるための対策が急務だという声が国内で上がっている。
10月20日、「共に民主党」パク・ヘチョル議員が公開した公的機関の障がい者雇用状況によると、昨年12月末時点で87の公企業および準政府機関のうち、障がい者義務雇用率を守らなかった機関の割合は19.5%、230のその他の公的機関では34.8%に達していることがわかった。
また、障がい者政策を主管する保健福祉部(日本の厚生労働省に相当)ですら、昨年の障がい者雇用率は3.6%にとどまり、義務雇用率を達成できなかった。
障がい者の雇用義務は、国家機関・地方自治体・公的機関および常時雇用労働者50人以上の民間企業に適用される。
現行の「障がい者雇用促進および職業リハビリ法」では、障がい者の義務雇用率を公的機関・国家機関は3.8%、民間企業は3.1%と定めている。
もっとも、大企業や銀行などもおおむね義務雇用率を満たしていないのが現状だ。昨年基準で国内の主要20大企業のうち、サムスン電子、現代自動車、LG電子など13社と、主要5大銀行(新韓・ウリィ・国民・ハナ・農協)も義務雇用率を達成していなかった。
義務雇用率を守らなかった機関や企業は、未雇用人数の比率に応じて差別的に「雇用負担金」を納付しなければならない。昨年、民間企業上位20社と中央官庁の障がい者雇用負担金の合計は、それぞれ約943億ウォン(日本円=約99億円)と約279億ウォン(約29億円)に達した。
一部では、この「雇用負担金」の基準額が支払い可能な範囲に設定されていることから、実質的な義務雇用率の向上に繋がっていないとの指摘もある。
現行の負担金は最低賃金の60~100%程度に定められている。そのため、政府機関や企業側は、採用よりも「負担金の支払い」を選ぶケースが多いという。
しかし、経営界からは一部の業種や地方事業所では適切な人材の確保が難しく、「仕方なく」負担金を納める場合も多いとし、職務特性や地域人材プールを考慮した柔軟な例外規定、代替履行、そして奨励金中心の政策転換が必要だと訴えている。
専門家たちは、若年層の比率が極めて低い障がい者の人口構造を考慮し、中年層・高齢層の障がい者を対象とした雇用開発が先行されるべきだと提言する。
仁川(インチョン)大学社会福祉学科のチョン・ジヘ教授は「多くの政府機関や企業は20~30代を採用したがる傾向にあるが、国内の障がい者の約80%は50代以上の世代だ」とし、「彼らが能力を発揮できる職場をつくることが先決だ」と述べた。
チョン教授はまた、「十分ではないが、雇用負担金や奨励金などの制度により義務雇用率が上昇する成果もあった」としながらも、「義務雇用率を遵守した企業への奨励金を現行より引き上げ、より実質的な効果を得られるようにすべきだ」と説明した。
パク議員は「障がい者義務雇用を履行していないその他の公的機関に対して、主管省庁の特別な関心と対策が急がれる。韓国障がい者雇用公団も、障がい者雇用環境の診断や分析など多様なコンサルティングを通じ、その他の公的機関が障がい者雇用を拡大できるよう支援を強化すべきだ」と強調していた。
(記事提供=時事ジャーナル)
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