韓国ギャロップ社が1月12日に発表したところによると、文在寅大統領の支持率は前週から1%ポイント増の73%を記録した。
7割以上の韓国国民が彼を支持しているわけだが、文大統領の人気はいまに始まったことではない。
同社が2017年11月に発表した調査結果では、就任後6カ月時点での支持率は73%を記録していた。
これは、歴代大統領の同時期の支持率と比較しても、金泳三元大統領(83%)に続き2位に入る数字だ。
韓国国民から絶大な支持を集めている文大統領。
なぜ、文大統領はこれほど支持されているのだろうか。1月12日発表の同調査で、回答者が肯定評価をした理由を見てみよう。
文大統領を支持する理由として最も多かったのは、「コミュニケーション・国民に対する共感の努力」(15%)だ。
実際、文大統領は、国民とのコミュニケーションを重視してきた。
例えば、昨年5月18日の光州民主化運動記念行事で遺族を抱きしめる姿は感動的にクローズアップされたし、セウォル号沈没事故の遺族を直接労わる姿も大きく報じられた。
また、市民とためらいなくスマホでツーショット写真を撮る姿も象徴的だ。厳しく警備が敷かれていた朴槿恵前大統領の時代からは想像もできない光景だった。
さらに、1月10日に開かれた新年の記者会見でも、大統領自らが記者を指名する形式で質疑応答が行われ、話題を呼んだ。
現地メディアは、「ホワイトハウスと同じ形式だ」「型破りな試みで驚いた」などと注目。
ネット上では「コミュニケーションに気を使う大統領、かっこいいです」「質問が偏ったことは惜しいけど、大統領のやり方は素敵」といったコメントが寄せられている。
国民とのコミュニケーションを重視する文大統領の人柄は、高く評価されているわけだ。
次いで多かった回答は、「庶民のための努力・福祉の拡大」(14%)。
その一例として挙げられるのは、昨年8月に文大統領が発表した「健康保険保障強化策」が挙げられるだろう。
“文在寅ケア”とも呼ばれる強化策の目標は、「2022年までにすべての国民が医療費を心配しなくていい国、いかなる病気でも安心して治療を受けられる国をつくっていく」こと。
健康保険の適用外だった診療科目を減らすことや、2018年から医療費の自己負担額を大幅に引き下げることなどが発表されている。
また文政権は、今年から最低賃金を前年度の比16.4%増の7530ウォン(約750円)に引き上げている。
これは過去最大の引き上げ幅で、引き上げ率が2ケタになるのは2007年の12.3%以来、11年ぶりのことだ。
最低賃金の引き上げには賛否両論があり、その影響は未知数だが、庶民にとって一筋の光となっていることは間違いないだろう。
3位以下の回答も興味深い。
「ベストを尽くしている・一生懸命やっている」(12%)、「改革・積弊清算・改革の意志」(9%)、「外交をうまく行っている」(8%)などが続く。
聞きなれないのは4位の「積弊清算」という単語だが、ざっくりと言えば、非正常を正して過去の不正腐敗を清算するという意味の言葉だ。これは、昨年7月に文政権が発表した「100大国政課題」で1番目に挙げられた課題でもある。
昨年8月には「積弊清算委員会」が設置されるなど改革が進められているが、朴前政権では国家情報院の政治介入など様々な問題が明るみに出ただけに、「積弊清算」に対する国民の期待度は高いようだ。
このような調査結果を見ると、文大統領が支持されている要因は、“実績”よりも、“人柄”や“ビジョン”にあるように思える。
出生率や失業率は未だに悪く、就任から1年も経っていない文大統領によって実質的な生活が大きく改善したわけではないだろう。それでも「きっと国を良くしてくれるはずだ」という期待と信頼を、国民は文大統領に抱いているというわけだ。
文大統領の写真やイラストが入ったグッズが人気を集めているところを見ても、アイドルのように好感度が高いことも伝わってくる。
いずれにしても、文大統領の支持率が高いことは事実だ。これからもその人気が続いていくか、引き続き動向を追っていきたい。
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