韓国の国定歴史教科書で、大韓民国樹立の年を“1948年”と表記することが確定した。
10月27日、韓国教育部(「部」は日本の「省」に相当)によると、11月28日に公開される予定の歴史教科書では、1948年を「大韓民国“政府”樹立」ではなく「大韓民国樹立」と表現するという。
日本の感覚からすると、「もともと1948年が韓国建国の年では?」と思うかもしれないが、韓国国内では非常にショッキングなニュースとして報じられている。
というのも、韓国では建国年を“1919年”とする見方が強いからだ。
例えば、朴槿恵大統領が今年8月15日の「光復節」演説で、「今日は建国68周年を迎えた歴史的な日です」などと“1948年建国”を強調したときは、野党議員らが「大統領の歴史観には問題がある」などと強く反発していたほど。実際に、韓国の憲法前文には「悠久な歴史と伝統に輝く我が大韓民国は3.1運動で建立された大韓民国臨時政府の法統と不義に抵抗した4.19民主理念を継承して…」となっている。
3.1運動とは、日本統治時代の1919年3月1日に朝鮮半島で起きた独立運動のこと。韓国では現在も祝日となっている記念日だ。つまり、韓国建国は1919年で、韓国政府が樹立したのが1948年という見方をしている人が多いわけだ。
そんななかで国定の歴史教科書が“1948年建国”と確定させたことで、進歩勢力からの反発は必至。それを踏まえて教育部は、12月初めに討論会を開くという。“1919年派”と“1948年派”の論争が続いているなかで、公開的な議論を通じて沈静化をはかる狙いだろう。
ただ、韓国ネット民たちの反応を見ると、事態は簡単に収拾できるとは思えない。
「1948年に建国としたい人たちは、それ以前は国がなかったから“国を裏切って親日をしていたわけではない”という名分がほしいんだろ」
「話にならない。独立運動をした人たちは外国人になるのか? 李承晩の国籍は? 国民の大多数が反対しているだろう」
「憲法の前文にも明記されている臨時政府の正当性を否定している」
「親日派の既得権勢力が最後まであがいているね…」
「政権が変わったらすぐに廃止しろ」
そういった韓国ネット民の意見はあるものの、説得力を持つのはやはり「1948年建国」ではないだろうか。明知大学のカン・ギュヒョン教授は、『朝鮮日報』に寄せたコラム「“1948年建国”といえない理由はない」で述べている。
「1919年は、3.1運動と臨時政府樹立という歴史的な事件を通じて大韓民国が“懐胎”したというとても大きな意義を持つ。王政復古ではなく民主共和制を追及し、独立した近代国民国家を作ろうという理想は、大韓民国のアイデンティティを立てたもので、その精神と法統を受け継いだのが大韓民国だ。
だから筆者はさまざまな紙面を通じて1919年を“精神的な建国”と表現した。このときが真の国家樹立でないということをよく理解したのは、他ならぬ臨時政府の人士たちだった。1941年11月に臨時政府が発表した“建国綱領”は、独立と新しい国家建国の青写真を明かした好例だ。臨時政府が主唱した国民主権と国家主権の理想が実現されたときが1948年だった」
いずれにしても、当分は議論が続きそうな韓国の建国年を巡る論争。どういった結論に落ち着くのか見守りたい。
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