いわゆる“崔順実(チェ・スンシル)ゲート”の余波がまったく収まりそうにない韓国。次々と不正・腐敗が暴かれていくなかで、朴槿恵大統領への特別捜査も数日中に行われる予定だ。
そんななかで朴槿恵大統領の父・朴正煕元大統領の「銅像建立計画」が進行しているというのだから、もはやワケがわからない状況になっている。
数々の報道を見ると、ここ数週間で韓国の好感度は地に落ちたように感じる。「それ以前から悪かった」という意見もあるかもしれないが、近年の韓国のイメージ、とりわけ韓国製品に対する世界の評価はそれほど悪くなかった。
漢陽大学ハン・チュンミン経営学部教授が行った28カ国の消費者を対象にした設問調査によると、韓国製品に対するイメージは、7点満点中5.27点だったという。日本製品(6.16点)に比べれば低いものの、比較的良好といえるだろう。
キムチの世界化はそれほど進んでいないといわれているが、韓国製品に対するイメージが悪くないという結果は他にもある。米インターブランド社が10月5日に発表した「世界企業ブランドランキング」を見ると、サムスン電子の7位をはじめ、韓国からはトップ100に3社が入っているのだ。
100位までにランクインした企業を国別に分けてみると、アメリカ(52社)、ドイツ(10社)、フランス(8社)、日本(6社)、イギリス(5社)がトップ5となる。その後にオランダ(3社)と韓国(3社)が続いており、世界の6位タイということであれば上々の結果だろう。
一方で、前出のハン教授によると、韓国の“国家イメージ”は4.98点で、韓国文化に対する外国人の好感度は3.89点にしかならないこともわかったという。つまり韓国製品のイメージは比較的良好だが、韓国自体のイメージはそれほど良くないという結果だ。
韓国ではこういった国家イメージや好感度に対する調査が日本に比べて活発で、政府も向上に向けて積極的に取り組んでいるという印象がある。その象徴は、2009年1月22日に大統領直属の機関として設置された「国家ブランド委員会」だろう。
「信頼されて品格ある大韓民国を作る」ことを目的に発足された同委員会だったが、委員会の活動効果に疑問符が投げかけられるばかりでなく、さまざまな憶測を生んで設立から4年で廃止に。国家ブランド力を向上させようという 国家ブランド委員会にそもそも品位がなかったという笑えないオチだった。
また、世界的な市場調査会社GfKによる国家ブランド指数(2014年)を見ても、ドイツ(1位)、アメリカ(2位)、日本(6位)などが上位にランクインするなかで、韓国は27位に留まっている。
興味深いのは、こういった国家イメージやブランド力を示すアンケートで常に上位に入るドイツが、意外にも韓国に対して否定的な見方をする傾向が強いことだ。イギリスBBCが行った調査では、ドイツには韓国否定派が65%もいるといい、日本(28%)に比べて圧倒的に高いことがわかる。
ちなみに「国家ブランド委員会」が廃止された後も、韓国では国家イメージを向上させるための努力を続けてきた。朴槿恵政権のそういった意志が感じられたのは、国家のキャッチフレーズを変更した点だった。
韓国では2002年の日韓ワールドカップ開催を機に「ダイナミック・コリア(Dynamic Korea)」というキャッチフレーズを作った。それを35億ウォン(約3億5000万円)かけて修正し、今年7月に「クリエイティブ・コリア(Creative Korea)」というキャッチフレーズを打ち出しているのだ。
しかし、その「クリエイティブ・コリア」には残念なことに発表から数日で盗作疑惑が持ち上がり、そちらのほうが話題に。さらに最近になって「クリエイティブ・コリア」というキャッチフレーズにも、あの崔順実氏が関与していたというのだから驚かざるを得ない。
いずれにせよ、ここ数年間、国家イメージを向上させようと尽くしてきた韓国の試みは、崔順実ゲートによって水泡に帰した感が否めないだろう。韓国の好感度はこのまま下がり続けてしまうのだろうか。
「ダイナミック」で「クリエイティブ」な打開策=改革が今こそ必要なときだと思うのだが。
(文=慎 武宏)
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