韓国のムン・ジェイン(文在寅)前大統領の娘、ムン・ダヘ氏が飲酒運転の疑いで警察の捜査を受けることになった。
父親が「殺人行為と同じだ」と指摘していた犯罪の容疑で娘が捜査を受ける事態が展開され、政界と世論も揺れている。与党「国民の力」が攻勢を強めるなか、ムン・ダヘ氏の検察捜査を擁護してきた野党は困惑した表情を隠せない様子だ。
10月6日、警察によると、ムン・ダヘ氏は7日にソウル龍山(ヨンサン)警察署に出頭し、道路交通法違反の疑いに関する調査を受ける予定だ。
ムン・ダヘ氏は10月5日未明、龍山区・梨泰院(イテウォン)のハミルトンホテル前で、飲酒状態で車を運転中に車線変更してタクシーと衝突した。飲酒測定の結果、ムン・ダヘ氏の血中アルコール濃度は0.14%で、免許取り消し基準(0.08%以上)を超えていた。
JTBCや聯合ニュースTVによると、ムン・ダヘ氏が運転していた軽自動車は接触事故直前、ハミルトンホテル前の交差点で信号無視をしていた状況も確認された。
入手されたCCTV映像でムン・ダヘ氏は、事故前日の4日夜、梨泰院の路地に車を駐車し、レストランに入る様子が映っている。7時間にわたって飲酒と食事をした後、彼女はふらつきながら車に向かい、そのまま運転席に乗り込んで路地を抜け出した。
交差点に出たムン・ダヘ氏の車は、右折車線の第2車線から左の方向指示灯を点けたまま左折した。左折信号が出ていない状態だった。
他方から進行信号を受けて正常に進入していた車両は、道路の真ん中にいたムン・ダヘ氏の車のせいで停止したり、混乱が生じたりした。ムン・ダヘ氏はどうにか左折して交差点を通過したが、その後、車線変更の際に後続していたタクシーと衝突した。
ムン・ダヘ氏が運転していた現代自動車の「キャスパー」は、ムン・ジェイン前大統領が在任中の2021年10月に事前予約で購入したもの。当時、ムン・ジェイン前大統領は「労使共生の新しい経済モデルである“光州(クァンジュ)型雇用”を通じて生産された初のモデル。退任後も使用する予定だ」と述べていた。
この車は今年4月、ムン・ジェイン前大統領からムン・ダヘ氏に譲渡され、その4カ月後の8月、済州島の警察署が罰金未納を理由に当該車両を差し押さえたことが伝えられている。
ムン・ダヘ氏の飲酒運転の波紋は政界にも広がった。
「国民の力」チュ・ギョンホ院内代表は、国会での記者懇談会でムン・ダヘ氏の事件について「共に民主党の専売特許である“自分には甘く、他人には厳しい”という態度をそろそろやめてほしい」と非難した。
チュ・ギョンホ代表は「ムン・ジェイン前大統領は在任中、飲酒運転は単なるミスではなく殺人行為だと明確に強調していたのではないか」とし、「ダヘ氏だけが例外になるのか?国民の誰がそれに同意するだろうか」と反問した。
ムン・ジェイン前大統領は在任中、飲酒運転を「殺人行為」と規定したことがある。2018年10月の首席補佐官会議で「飲酒運転事故はミスではなく、殺人行為にもなり得る。他人の人生を完全に壊す行為になったりもする」と述べ、初犯であっても処罰を強化するよう指示していた。
キム・ジャンギョム議員もフェイスブックに投稿し、「飲酒運転は殺人だと、青瓦台(大統領府)で一緒に住んでいた人物が言っていた。どんなに父親の言葉に詭弁が多いとしても、聞くべきことは聞くべきだ」とし、「我慢しないと言っていたが、ついに行動を起こしたのか」と皮肉を込めて書いた。
これはムン・ダヘ氏が9月4日、元夫であるソ氏の「Thai Eastar Jet」特別採用疑惑に関連する検察の捜査に対し、X(旧ツイッター)に「もうこれ以上我慢しない」と激しい言葉を投稿したことを念頭に置いた発言である。
ナ・ギョンウォン議員もフェイスブックで「民主党現代表のイ・ジェミョンと彼の支持者たちは弾劾暴走運転、民主党の前代表であり前大統領の娘は飲酒運転をする」とし、「彼らの偽りの扇動と偽善、何が本当で何が嘘か、最終的にはすべてが明らかになる」と批判した。
国民の力のシン・ジュホ常勤副報道官は、論評で「イ・ジェミョン代表も飲酒運転の前科がある。現職の党代表から民主党出身の大統領の娘まで、飲酒犯罪に走ってきたので、今や民主党と飲酒運転は切っても切れない関連検索語となった」と批判し、「民主党が飲酒運転を擁護しないのであれば、今回の事件に対する明確な立場表明が必要だ」と強調した。
一方で共に民主党は、飲酒運転の立件に対して困惑した反応を隠せない様子だ。
共に民主党のパク・チャンデ院内代表は、国会で開かれた記者懇談会で今回の件に関して「(飲酒運転は)してはならないことだ」とし、「党の立場が異なることはないだろう」と述べた。続けて「特に他に申し上げることはない」と言葉を慎んだ。
親文派(親ムン・ジェイン)の陣営は、ムン・ダヘ氏の飲酒運転について特に言及せず、沈黙を続けている。
(記事提供=時事ジャーナル)
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