イ・ボミが教えてくれた韓国女子ゴルフ強さのヒミツ

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今や日本女子プロゴルフツアーでも人気選手のひとりになったイ・ボミ。私が彼女と初めて取材したのはまだ日本ツアーに本格参戦する前。正確には2011年1月のことだった。

優勝はおろかまだ日本デビューを飾っていなかったイ・ボミを取材することになったのは、韓国KLPGA広報部から「実力があり、キュートで親しみやすく、人柄もいい。日本でも絶対、人気が出るから今から取材しておいたほうがいい」という推薦があったからだ。

実際、電話対応もとても丁寧で感謝のメールを送ると、彼女からこんな文面のメールが返ってきた。

「まだ日本で活躍していない私に関心を持ってくださって、ありがとうございます。日本で良い活躍をお見せできるように頑張ります」

絵文字が入っているあたりが、今どきの女の子らしかったことを今でも強く覚えている。

あれから10年近い歳月が過ぎたが、今や日本語も上達し、日本のテレビ番組にも出演するほどの人気者になったイ・ボミ。

数年前にインタビューしたときには、日本のアマチュアゴルファー向けにワンポイントレッスンをしてくれたこともあった。教えてくれたのは目隠しトレーニングと硬貨パッティング。いずれも自宅でも手軽にできる練習法だった。

思わずハッとしたのは彼女が言ったこんな一言だった。

「ゴルフは自分の内面や気質がそのまま映し出されるスポーツだと思うんです」

今や日本だけではなく米国ツアーなど世界を席巻する韓国ゴルフ。選手、コーチなど関係者に話を聞くと、かの国ではゴルフをメンタルスポーツとして捉えているところが大きい。

2015年に日米韓でメジャーを制して今季からアメリカツアーに本格参戦するチョン・インジのコーチも言っている。

「考えてみてください。スイングというものは毎回完璧にはできないものです。つまり、スイングに依存するのではなく、コース攻略によってスコアを作り出す能力が必要なのです。ですから、コース攻略に対する理解度とともにメンタルがとても良くなければなりません」

イ・ボミ(写真提供=KLPGA)


では、そのメンタルを韓国ではいかにして鍛えられているのか。その方法はさまざまだが、彼女たちが育った環境とも無縁でないだろう。

例えば年少の頃からのスパルタ教育。韓国では両親の影響でクラブを握る選手が多く、24時間ゴルフ漬けで厳しく鍛えて育つ選手が多い。“韓国ゴルフ界の女王”パク・セリはその代名詞だし、アン・ソンジュやシン・ジエも父親に鍛えられて腕を磨いきた。

しかも、ジュニア時代から競争が激しく、誰もが国家代表になることを目指して鎬を削りあっている。

それもかなりの狭き門だ。国家代表になれるのは男女ともに年間8人ずつで、代表入りのためには代表常備軍に名を連ねなければならない。

この代表常備軍も男女16人ずつ、ジュニア常備軍に至っては男女3人に限られているだけではなく、その顔ぶれが毎年入れ替わる実力主義。国内外の公式戦成績(10~15試合)がポイント換算されて常備軍が選抜され、さらに競争に勝ち残った者だけが国家代表になれるという。

一度選ばれてもアドバンテージは一切なし。あのシン・ジエも代表歴は2005年の一度のみ。イ・ボミに至っては代表常備軍入りしかない。つまり、代表を頂点にしたサバイバル競争が、ジュニア時代から日常化されているのだ。

そんな熾烈な競争の中で揉まれ育つからこそ、韓国人ゴルファーはしぶとく勝負強い。

しかも、最近は強さだけではなく、美しさも兼備した美女ゴルファーたちが次々と誕生している。

実力だけではなく、美に関しても競争が激しい韓国女子ゴルフ。旧知の韓国ゴルフ記者によると、イ・ボミの日本での人気と成功に刺激を受けて、日本ツアー参戦した韓国人女子ゴルファーたちも増えた。

キム・ハヌルやユン・チェヨン、アン・シネなどもイ・ボミに刺激を受けて、日本にやって来たのかもしれない。

文=慎 武宏

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