『キャプ翼』に感情移入できない韓国で人気が高い“意外な”日本のサッカー漫画とは?

2016年05月12日 話題 #サッカー
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日本はもちろん、世界各国で愛されているサッカー漫画『キャプテン翼』。

だが、韓国では大空翼率いる南葛中学が日向小次郎率いる東邦学園と両校同時優勝するまでの全37巻までで終わっており、その後に続くワールドユース編などは翻訳出版されなかった。

その理由のひとつには「日の丸をつけた翼たちが世界の舞台で活躍する物語に感情移入できない」という韓国読者の複雑な感情もあったと言われているが、理由はそれだけではないらしい。

『キャプテン翼』の韓国版・第1巻

というのも、韓国では『キャプ翼』を凌ぐ人気を誇るサッカー漫画があった。

タイトルは『蹴球王シュットリ』。1993年から韓国のテレビ放送局SBSで放送されたアニメ番組で、当時は1994年アメリカW杯のアジア予選最中だったこともあって高視聴率を誇った。

Kリーガーの中にはこの『シュットリ』に影響された選手たちが多く、サッカー好きで知られる日本でも有名なとあるK-POPアイドルも「シュットリを見て育った」と公言するほど。筆者もその存在は知っていた。

まさに韓国の『キャプ翼』なのだが、実はこの『シュットリ』は日本のアニメだという。

原題は『燃えろ!トップストライカー』。韓国ではこの『シュットリ』が日本のアニメだったことを知らず観ていた子供たちが多く、筆者の知人も「知らなかった!!」と驚いていた。

この『シュットリ』や『キャプ翼』をはじめ、韓国に上陸を果たした日本のサッカー漫画は実に多い。

試しに調べてみたのだが、懐かしいものから意外なものまで、かなりの数だった。最近は『GIANT KILLING』や『エリアの騎士』などが人気だという。

『キャプ翼』は37巻までで終わったが、最近の作品は原作が忠実に翻訳されている。『エリアの騎士』は主人公・逢沢駆が高校サッカーをステップにU-22日本代表への成長していく物語だが、登場人物も日本代表ユニホームを着ており作画もそのままだ。

韓国での第一次日本大衆文化開放(1998年10月)以前に翻訳出版された『キャプ翼』は、韓国版では大空翼の名前が「ハン(韓)・ナルゲ(翼という意味)」だったり、前出したようにワールドユース編などが発刊されることはなかったが、時代が変わり日本と韓国の文化交流が盛んになった今日、オリジナルが再現されている。

韓国では1980年代から1990年代に青年期を送った人々を“8090世代”と呼ぶ。

1990年代に韓国で一大ブームを巻き起こした『スラムダンク』は、その“8090世代”たちの強い要望で昨年、日本で発売されたオリジナル・コミック版を忠実に再現した『スラムダンク オリジナル完全版』なるものも発売されている。

ちなみに今から10数年前の話になるが、当時、Jリーグのジェフ市原に所属した韓国代表のストライカー、チェ・ヨンスと漫画に関する仕事をしたことがあった。『週刊ヤングジャンプ』増刊号として2002年ワールドカップ特集号を作ることになり、日本と韓国の選手たちの物語を漫画にするというもの。筆者はその原作を頼まれ、チェ・ヨンスに依頼したところ、彼は即座に快諾したあとで、こんな話をしていたことを思い出す。

「日本の漫画は学生時代によく読みましたよ。特に大好きだったのは『スラムダンク』です」

サッカー漫画でないことが意外だったが、今ではその理由がわかるような気がする。チェ・ヨンスも“8090世代”なのだ。そんな彼も今では42歳になり、現在はKリーグのFCソウルの監督を務めている。

今度再会した暁には『シュットリ』の話も聞いてみたいと思うが、もしかしたら最近の愛読書は『GIANT KILLING』かもしれない。

(文=慎 武宏)

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