自らのルーツ忘れず、“韓国らしさ”で世界を魅了 『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』マギー・カン監督《韓国経済誌が選ぶ2025年の人物》

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韓国経済誌『時事ジャーナル』が選ぶ「今年の人物」には、時代精神が込められている。

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2025年の大韓民国という巨大な盤面を支え、動かしている人物たちは、果たして誰で、何を意味するのだろうか。いま韓国を動かしているという言葉は、民心に最も速く敏感に、そして国民が最も強く望む方式で反応しているという意味だ。

そのダイナミックなエネルギーの流れを綿密に読み取ることができるなら、私たちは時代的要求を把握できる。何よりもそこには、大韓民国の希望と課題が込められている。

大韓民国を貫く滔々(とうとう)たる民心の流れと時代精神を示す人物たちを見ていくことは、だからこそ重要だ。そしてその過程は、時代像を写し取る作業でもある。

本サイト提携メディア『時事ジャーナル』が1989年の創刊以降、37年目にわたり「今年の人物」を選定してきた理由がまさにここにある。『時事ジャーナル』は読者のアンケート調査、編集局記者の投票などを基に、綿密な検証と討論を経て今年の人物を選定した。今回は「2025年の文化人」として、Netflix映画『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』を手掛けたマギー・カン監督を紹介したい。

5歳でカナダ移民、韓国人としてのアイデンティティを忘れずに

「映画を通じて、子どもたちと共有できる新しい世代のキャラクターを誕生させた」

『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』で1つの「シンドローム」を築いたマギー・カン監督の言葉どおり、作中に登場したK-POP3人組ガールズグループ「ハントリックス」は、今年、ある人にとっては「ディズニープリンセス」であり、またある人にとっては「セーラームーン」のような存在として刻まれた。

世界中の少女たちに愛されるディズニープリンセスと、女性ヒーロー神話を前面に打ち出したセーラームーンという系譜は、時代と文化を超えた象徴的な存在だ。ハントリックスがそれになぞらえられるということは、作品が特定の国家やジャンルの境界を越え、グローバル文化の中心に定着したことを意味する。

『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』はそれほどまでに熱かった。今年6月の公開以降、わずか3カ月で3億2500万回視聴を記録し、Netflixで「歴代最も多く視聴された映画」となった。OST『Golden』はビルボード「ホット100」で通算8週間首位を獲得するなど、音楽市場を揺るがした。

すでに今年1年で数々の記録を打ち立ててきた『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』は、アメリカを代表する大衆文化賞であるゴールデングローブ賞で、最優秀アニメーション映画賞、主題歌賞(『Golden』)、興行成績賞の3部門にノミネートされ、年末まで衰えぬ影響力を誇示している。グローバルなファンダムを持つスターや、すでに検証された知的財産(IP)に頼ることなく、今年最も熱いコンテンツを生み出した人物。韓国文化をアニメーションに最も効果的に投影し、新たな韓流を生み出したマギー・カン監督が、『時事ジャーナル』選定の「2025年の文化人」に選ばれた。

マギー・カン監督
マギー・カン監督(写真提供=OSEN)

マギー・カン監督は韓国系カナダ人だ。5歳のときに父親に連れられてカナダへ渡り、そこでずっと育ってきたが、自分が韓国人であるというアイデンティティを忘れたことはなかった。

ドリームワークス、ブルースカイ、ワーナー・ブラザース、イルミネーションといった名だたるスタジオでストーリーアーティストやスーパーバイザーとして働いてきたマギー・カン監督は、自身の初長編監督作の舞台として韓国を選んだ。初めて構想したオリジナルプロジェクトに、自身のルーツを忘れまいとする思いと、韓国を世界に知らせたいという意志を反映させたのだ。

彼女は、韓国の文化的遺産を示しつつも、世界中の人々の心を動かせる映画を作りたいと考えた。そこでマギー・カン監督は、ムーダン(巫堂)や悪鬼といった韓国的な素材を思い浮かべた。このアイデアに、「デーモン・ハンターズ」という正体を隠すための要素としてK-POPを加えたことで、作品の骨格が整った。

マギー・カン監督はできる限り「韓国らしい」作品を作るため、映画のすべての場面とデザインに韓国的要素を盛り込んだ。ハントリックスのメンバーの衣装から、トラやカササギのキャラクターに至るまで、作品の随所にマギー・カン監督と韓国人たちの手が共に染み込んでいる。

制作から公開までには7年の歳月がかかった。新たなヒーローとともに、国家とジャンルを超えた韓流コンテンツが誕生した瞬間だった。マギー・カン監督は「女性戦士グループが密かに悪党を倒し、世界を救う姿を想像するようになり、幸運にも新しいタイプの女性ヒーローを見せるきっかけになった」と語り、「強くありながら欠点もあり、不完全な存在というのは、スクリーンでぜひ会ってみたかった女性像だった」と述べた。

『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』で考証された韓国文化の多くは、マギー・カン監督の幼少期の経験から生まれている。彼女は、子どもの頃から好きだった食べ物や、アニメーションで見てみたかった料理を作品に取り入れた。明洞(ミョンドン)や北村(プクチョン)を実際に歩き回り、路地のデザインや傾斜を自ら体感した。ハントリックスやライオンボーイズを作る際、特定のグループやメンバーを参考にしたわけではないが、すべてのK-POPアイドルからインスピレーションを受けたという。

映画に挿入された楽曲は、すぐにK-POP市場で発売できるレベルのクオリティで制作された。誰も試みたことのない「K-POPのミュージカル化」を成功させる過程は、未知であり困難でもあった。

マギー・カン監督は、代表的なOST『ゴールデン』が最も制作が難しかった曲だと語っている。主人公ルミの願望と渇望を込めたこの代表曲の最終バージョンを見つけるために、7~8種類ものバージョンを経たという。そうして完成した「最も韓国的なもの」は、ついに「最も世界的なもの」となった。

続編制作を協議中も「実写化はない」

『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』の影響力は、次回作への期待にもつながっている。

マギー・カン監督は以前、来韓記者会見で続編制作の可能性に言及し、「より多くの韓国文化を作品を通じて見せたい」と語っていた。タイトルは未定だが、続編制作をめぐるソニー・ピクチャーズとNetflixの協議はかなり進展していると伝えられている。作品は2029年公開を目標としているという。

実写映画化への期待も浮上したが、マギー・カン監督はこれについてきっぱりと線を引いた。彼女は海外メディアのインタビューで、「この映画のトーンやユーモアの要素はアニメーションにぴったりだ」とし、「これらのキャラクターを実写の世界で想像するのは難しい。あまりにも現実的になり、まったく合わない」と語った。

マギー・カン監督は「英語で韓国文化を伝える方法が、自分に合ったやり方だ」と述べている。文化的には韓国人でありながら、北米で育ち、両方の世界に足を置いている自分が、2つの世界を融合させなければならなかったという説明だ。

彼女は「文化的に完全に韓国的な映画が、アメリカの会社によって制作されるという事実は、韓国文化が持つ強力な力を証明するものだ」とし、「Kカルチャーの大きな力を示す事例だと思うので、大きな誇りを感じている」と語った。

実際、『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』はKカルチャーの外延を拡張したとの評価を受けている。作品公開後、韓国を訪れる外国人が増え、北村韓屋村など作中に登場する名所にも観光客の足が続いている。

KカルチャーやK-POPを超え、関連産業にまで影響力を及ぼしたマギー・カン監督は、2025年大韓民国コンテンツ大賞授賞式で玉冠文化勲章を受章した。

(記事提供=時事ジャーナル)

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