韓国ゴルフと言えば、イ・ボミやキム・ハヌルなど女子ゴルファーたちの活躍が目覚しいが、日本では韓国の男子プロゴルファーたちも活躍している。
代表的なのがキム・キョンテだろう。
キム・キョンテと言えば、2010年に韓国人初の日本ツアー賞金王に輝き、その勝負強さから“鬼”と呼ばれた人物。石川遼との競争の末に掴んだ賞金王だった。
その直後、雑誌の取材でロングインタビューする機会があったが、“鬼”という愛称とは対照的な、穏やかで柔和な表情が印象的だった。
「世のビジネスマンたちからすると僕たちは羨ましい職業でしょう」と、プロゴルファーという職業をCEOに例えるところにビジネス感覚も備えていることを伺わせた。
ただ、そんな彼も数年間はスランプに苦しんだ。アメリカ、日本、韓国を転戦したせいで調子を崩し、飛距離アップを目指したスイング改造の模索もあったが、2015年は見事に復活。6年ぶりの日本ツアー賞金王に輝き、韓国メディアも「日本のグリーンの支配者」(『朝鮮日報』)と報じたほどだった。
特筆すべきは近年、このキム・キョンテに続けとばかりに韓国の男子プロたちの日本進出が急増していることだ。
2011年に日本ツアー賞金王に輝いたのはペ・サンムンだし、数年前にはKPGA所属の韓国人ゴルファー100名弱が日本ツアーのQTを集団受験していたことが判明したこともあった。
思い出すのは、そうした流れをキム・キョンテがいち早く予言していたことだ。前出のロングインタビューのとき、彼は言っていた。
「僕たち韓国人選手が海外に飛び出すのは、国内では限界があるからです。賞金総額の規模は小さく、極端な話、男子の場合、ゴルフだけで生活できているプロは年間賞金ランクのトップ10ぐらいまででしょう。だから海外に飛び出す。世界にはもっとも大きなチャンスが広がっていますから」
実際、韓国男子ツアーの近年の低調ぶりは深刻だ。韓国男子ゴルフは2008年の20大会・賞金総額114億ウォン(約11億円)をピークに、年々規模が縮小している。
そんな停滞ぶりに見切りをつけて次々と海外に飛び出す韓国人選手たち。最近は日本やアメリカだけではなく、EPGA(ヨーロピアンツアー)を主戦場とする選手も急増中で、きっちり結果も残している。
そういったこともあり、KPGAツアーのギャラリー数が昨年より平均で2000人近く増えていると言うが、それも彼ら海外で活躍する選手たちのおかげで男子ゴルフのメディア露出が増えているおかげだと言う。
喜ばしいことなのに複雑な厳しい現実が暗い影を落としている。
もっとも、彼ら韓国人ゴルファーを受け入れる日本男子ツアーとて活況に沸いているわけではない。全盛期の1983年には46試合もあったが、ツアー試合数は近年、着実に少なくつている。
日韓ともに女子ゴルフは世界トップクラスの実力と人気を集めているが、国内男子ゴルフツアーの苦戦ぶりも共通しているのは皮肉に思えてならない。
文=慎 武宏
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