キム・ヨナ、イ・スンヨプは?韓国では引退した10人に3人は「無職」という現実

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東京五輪で期待以下の成績に終わってしまった韓国。国内では失望と不満の声が交錯するが、韓国スポーツ界が抱える課題、というよりも暗部を示した興味深いデータがある。

韓国国会議員であるイ・サンホン議員が2018年8月に韓国の国会・文化体育観光委員会で明かした資料だ。

イ・サンホン議員が明かしたのは「引退した韓国スポーツ選手たちの現況」。韓国の行政機関である文化体育観光部がまとめたもので、2015年から2017年までの3年間に引退したスポーツ選手たちの統計が記されている。

その資料によれば、昨年2017年に引退した選手は8962人。

2017年に引退した選手といえば、かつて日本のプロ野球で活躍し、日韓通算626本塁打を記録した“韓国の国民打者”イ・スンヨプ(日本では“スンちゃん”とも呼ばれていた)が思い浮かぶが、イ・スンヨプのように40代で引退した選手は全体の0.8%(71人)に過ぎなかったという。

むしろ多かったのは若い世代だ。

2017年に引退した選手を年齢別にみると、30代が1121人(12.5%)、20代が7770人(86.7%)と20代が最も多かったのだ。

こうした傾向は2017年だけではなく、2015年は9109人(83.8%)、2016年は8592人(85.4%)と20代で引退している選手が増えている。

この時期に引退した20代の選手といえば、愛くるしいルックスと妖艶な演技で新体操界の“美しき妖精”として一世を風靡したソン・ヨンジェが真っ先に思い浮かぶが、その数の多さからしておそらく大半はプロ野球、Kリーグ、KBL(プロバスケ)などのプロ選手に多いことだろう。

プロは実力の世界とはいえ、若くして引退を迫られる選手が多いことは日本も韓国も変わらないようだ。

引退後はスポーツの世界で生計を立てられない

ただ、その中には実力や環境など自分の意志とは関係なく、仕方なく競技生活を終らせた選手もいる。

「直近3年間の引退選手の就業状況」を見ると、兵役のために軍人になっている選手が2015年には2.52%、2016年には4.48%、2017年には2.0%もいるのだ。

「韓国スポーツと兵役」は切っても切れない関係だが、兵役のために選手生活を閉じなければならない現実が韓国にはあるのだ。

こうした現実もさることながら、ショッキングだったのは引退した選手たちの就業状況だ。

例えばコーチや監督など指導者たちが含まれる「スポーツ関連従者」は、2015年に21.7%、2016年は25.1%、2017年は22.7%だという。つまり、引き続きスポーツの世界で生計を立てている者は3割にも満たないわけだ。

最近は韓国代表としても活躍した“美女スイマー”からグラビアモデルに転身したチョン・ダレなどスポーツ界から飛び出して“第二の人生”をスタートさせる者も増えている。

前出のイ・スンヨプやソン・ヨンジェもアジア大会で解説者デビューするなど、タレントとしての道を歩み始めた。

そういった“第二の人生”で最も成功しているのは、キム・ヨナだろう。

現役を引退したあと、平昌五輪の広報大使などを務める傍ら、SKコムやKB金融グループ、コカ・コーラ、ニューバランスなどの大企業からジュエリー、コスメブランドまで、約10社の広告モデルに起用されている。今年も広告グラビアの様子が明らかになり、話題になった。

キム・ヨナ

ただ、指導者や解説者として活躍したり、タレントやモデルなど引退後も注目を集める“セレブリティ”になれるのはごく一部。大多数がスポーツとは離れた人生を送っている。

2017年の調査でも「事務職従事者」が4.8%、「販売業従事者」が1.3%、「サービス業従者」が0.8%。日本と同様、一般企業などで“勤め人”となる者も多いわけだ。

「無職」が全体の3割強

ショッキングだったのは、「無職」と答えた人の数の多さだろう。

2015年は37.1%、2016年は35.4%、2017年度は35.4%が「無職」と答えたというのだ。

文化体育観光部は2017年に9億ウォン(約9000万円)の予算を投じて、スポーツ選手たちの再就職支援プログラムを運営しているというが、引退選手10人のうち3人は「無職」というこの数字は、韓国スポーツ界がまだセカンドキャリアをしっかりフォローアップできていないことを示しているといえるだろう。

勝敗を競い合うのがスポーツの世界であり、選手たちはその世界で熾烈な競争を繰り広げてきた。

だが、引退後の人生にも“勝ち組”と“負け組”の明暗がくっきり分かれてしまっている状況は、早急に改善すべきだろう。

(文=慎 武宏)

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