「韓国の五輪ムードが盛り上がるためにはメダル獲得が欠かせない。そういう意味ではショートトラックが注目だよ」とかつて語っていたのは、旧知の韓国スポーツ新聞の編集局長だった。
ただ、それも当然だろう。何しろ、ショートトラックは韓国のお家芸だ。これまで韓国が冬季五輪で獲得した31個の金メダルのうち、実に24個の金メダルがショートトラックで勝ち取ったもので、前回の平昌五輪でも金3、銀1、銅2を獲得するメダル量産種目となっていた。
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強いから人気もあり、かつて女子500mで名を馳せたチョン・ジスなどは五輪出場経験がなくとも、“美しすぎるショートトラック女神”として話題になったほど。
韓国ではショートトラックが“冬の花形スポーツ”として認知されているのだ。
では、なぜ韓国ショートトラックが強いのか。
現地では、膨大な練習量や体系的な選手管理システム、優秀なコーチ陣の指導など、様々な理由が挙げられているが、特筆すべきは国内の競争の激しさだろう。
前出のスポーツ紙記者も言っていた。
「国内の練習環境が整っていることもあって、韓国ではショートトラックの人気が高いんです。“スケートといえばショートトラック”という認識があるぐらいですよ。だから選手数も多くなり、自然と激しい競争の中に身を置くことになって、実力も高まる。そんな好循環があるんです」
実際、韓国のショートトラック選手数は多い。
例えば2017年。大韓体育会の登録選手数は563人(男子351人、女子212人)。スキージャンプ(18人)やスノーボード(171人)など雪上競技をはかるに凌ぐ選手数を誇り、スピードスケート(404人)とも150人以上の差があった。
ちなみに、スケート競技で最も選手数が多いのはフィギュアスケートの648人だったが、男子フィギュア選手はわずか44人と男女比率も偏っており、競技を断念する選手も少なくない。
逆に韓国ショートトラック界では、競争の激しさゆえ、代表入りが叶わず、外国に国籍を変更する選手も珍しくないほどだ。
そんな過酷な競争を勝ち抜いた選手たちばかりだけに、韓国は今回の北京五輪でもショートトラックに大きな期待を寄せている。
当然、メダル候補が多い。女子では平昌五輪で1500mと3000mリレーで金を獲得したチェ・ミンジョン(城南市庁)に連覇のチャンスがあり、男子では19歳で平昌五輪500m銀メダリストになったファン・デホンがその成長の証として金メダルを獲得することが期待されている。
そのほかにも今季ショートトラックW杯で銅メダルを手にした女子1500mのイ・ユビン(延世大学)、男子1500mのパク・チャンヒョク(スポーツトト)などがメダルを狙っている。
いずれにしても、ショートトラックが韓国中の視線を集めていることは間違いない。韓国は北京でもお家芸の意地を示すことができるか。注目したい。
文=慎 武宏
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