《韓国経済誌の視点》若者を動かす応援文化と映像活用 韓国KBOに見るプロ野球人気向上の秘訣

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韓国プロ野球KBOリーグが2年連続で観客動員1000万人を突破した。昨年は671試合目で達成したが、今年は84試合少ない587試合目で大台到達。それも、2008年北京五輪での金メダル獲得を記念して制定された「野球の日」(8月23日)に達成したことで、象徴性はさらに大きくなった。

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韓国の球場は連日大勢の観客であふれている。真夏の暑さにもかかわらず、チケット入手は空の星を取るような難しさだ。平日、週末を問わない。

LGツインズとロッテ・ジャイアンツが対戦した8月21日の蚕室(チャムシル)野球場もそうだった。平日(木曜日)だったが満員となった。3連戦(19~21日)すべて、球場は観客でいっぱいとなった。

一塁側からはLGファン、三塁側からはロッテファンの声援が球場全体に響き渡った。観客の60%以上が自身の応援する球団のユニホームを着用しており、色だけでどちらのファンか容易に見分けられた。

キウム・ヒーローズはファン層が薄く成績も最下位圏だが、本拠地・高尺(コチョク)スカイドームに出向くファンの足は止まらない。すでにシーズン最多完売記録を大きく更新している。

「成績」と「観客数」は必ずしも比例しない

8月25日時点で全10球団の平均観客数は1万7197人。昨年(1万4743人)よりも17%増加した。今のような推移が続けば、KBOはレギュラーシーズンで最終的に1238万人の観客を迎えることになる。昨年(1088万7705人)より100万人以上多く観客が球場を訪れるわけだ。

観客収入も爆発的に増えた。ハンファ・イーグルスの新本拠地・大田(テジョン)ハンファ生命ボールパーク開場によって客単価(チケット平均価格)が上がり、10球団の観客収入は昨年比32%増。現在まで1707億1722万ウォン(日本円=約180億円)を稼いだ。こちらもやはり、昨シーズンの観客収入(1593億1403万ウォン=約168億円)をすでに超えている。

KIAチャンピオンズフィールド
(写真提供=KIAタイガース)

プロ野球の人気が出る要因は複合的だ。2023年と2024年はコロナ禍で抑え込まれていた欲望が噴出し、「外で一緒にする経験」への渇望が球場で爆発した。

『江南スタイル』で知られる歌手PSYの「びしょ濡れショー」といった大型公演に観客が殺到したのと似た脈絡だ。最初は補償心理で訪れた球場で観客は新たな楽しみを感じ、それが再び球場へ足を運ばせる動力となった。

何より、プロ野球は他競技と違って約6カ月間、月曜日を除いてほぼ毎日開かれる。中毒性で追随するスポーツはない。

観戦意欲に繋がる「映像の二次利用」

動画配信サービス「TVING」が韓国国内で3年間の有線・無線ニューメディア独占放映権を確保し、40秒未満の二次映像加工を許可したことも大きかった。

2023年まで「NAVER」などポータルサイトで中継していた時期は、リーグや球団でさえも自前のYouTubeチャンネルに試合映像を使用することがままならなかった。しかし、TVINGが映像使用を許容したことで、各プラットフォームで試合映像が再加工され、野球を知らない人々の好奇心を刺激した。球団が自ら制作して投稿するベンチの映像や直撮り、ショートフォームなども新しい体験を求める20~30代ファンの目を引いた。

例として、10球団でハンファ・イーグルスは最も多いYouTubeチャンネル登録者数(イーグルスTV/48万7000人)を保有しており、有意義な収入を得ているという。ブランディングとファンダム強化を目的に開設した球団のYouTubeチャンネルが、別の収益創出へとつながっているわけだ。

オンラインで大きくなった「好奇心」はオフラインへと広がった。野球には複雑で難しいルールも多いが、“現地応援文化”はその壁さえも崩した。3時間近く選手それぞれの応援歌を歌い、振り付けを真似していると、例え試合状況をよく理解していなくても、その応援に引き込まれてしまうのだ。

知人に連れられて初めて球場を訪れたあるファンは、「野球のルールはまったく知らないけど、一緒に応援をしていたらすごいドーパミンを感じた。今では毎日、球場のチケットサイトをクリックしている」と語った。

とある球団のマーケティング部長は「球場が“遊び場”を越えて、“日なたのナイトクラブ”になった」と表現した。「チーム成績=観客数」という公式が必ずしも成り立ってはいないというわけだ。

大邱(テグ)を本拠とするサムスン・ライオンズがその典型的な例だ。サムスンは今シーズン、中下位にとどまっているが、観客数はレギュラーシーズン2位だった昨年よりむしろ30%増えた。10球団で初めてホームゲームの観客100万人を超え、平均観客数(59試合基準)も2万2963人で10球団最多だ。

大邱サムスン・ライオンズ・パークは10球団の中で収容可能人数(2万4000人)が最も多い。8月25日までに135万4816人の観客を呼び込んだサムスンは、KBO初の観客動員140万人突破を目前にしている。場合によっては、150万人観客も軽く超える勢いである。

積極的なグッズ消費も

観客増加の流れは、プロ野球産業全般にポジティブな影響を及ぼしている。20~30代のファンは単にチケットを購入するにとどまらず、グッズ消費にも積極的だからだ。

各球団の商品は、ユニホームやキャップにはじまりぬいぐるみ、タオル、カップ、スナップバック、スリッパなど生活用品にまで領域を広げている。斗山(トゥサン)ベアーズの「マンゴム(壊れたクマ)」、KIAタイガースの「ティニピン」、ロッテの「ポケモン」など、人気キャラクターとのコラボもグッズ販売を一層押し上げた。選手の記録に合わせた記念Tシャツ販売も今では日常的な収益モデルだ。

観客増加とともに球団の収益構造も多角化しており、電光掲示板の広告やユニホームパッチ、試合イベント協賛単価も上昇している。これは球団が母体企業への依存度を下げ、韓国スポーツマーケティングの新たな地平を開く契機になると見られている。他のプロスポーツの大部分が、依然として母体企業や自治体予算に大きく依存している状況とは対照的だ。

もちろん、2年連続1000万人という成績がプロ野球のバラ色の未来を保証するわけではない。人口減少、若年層の余暇多様化、競技力不均衡の深化などで人気が急にしぼむ可能性がある。八百長や飲酒運転、過去の学校いじめなど、選手の逸脱行為が興行に冷水を浴びせることもあり得る。

韓国球界としては、2008年北京五輪金メダルや2009年WBC準優勝で熱狂したプロ野球人気が、2017年を起点に衰えたことを思い起こさなければならない。人気は長くても「10年」なのである。

1000万という数字は単なる興行の成績表ではない。韓国社会が依然として集団的な楽しみを求め、共同体的感覚を確認したがっている証拠なのかもしれない。2002年のサッカー日韓ワールドカップのときに広場で感じた「一緒に」「ともに」という意味を、大衆は球場で再び表出しているのかもしれない。

ただ、先に述べたように人気は“砂の城”と同じだ。「野球観ないの?」という問いが、一瞬にして「なぜ野球を観るの?」に変わり得る。

現在の熱気を持続させるためには、KBOと各球団がリーグ競争力強化や地域密着、新しいファン層の発掘といった長期戦略を今から準備しなければならない。

流れに身を任せるのではなく、自分たちで流れを生み出さなければならない。

(記事提供=時事ジャーナル)

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