著書で慰安婦被害者を「自発的な売春婦」と表現した韓国の名誉教授が、控訴審で勝訴した。
ソウル高裁・民事12-1部は1月22日、慰安婦被害者9人がパク・ユハ世宗大学名誉教授を相手に提起した損害賠償訴訟の控訴審で、1人当たり1000万ウォン(約108万円)の支払いを命じた1審判決を破棄し、原告敗訴の判決を言い渡した。
パク教授は2013年8月に出版した著書『帝国の慰安婦』で、慰安婦被害者を「自発的な売春婦」「軍人の戦争遂行を助けた愛国娘」などと表現した。
これを受け、慰安婦被害者9人は2014年7月、名誉を傷つけられたとして1人当たり3000万ウォン(約325万円)の賠償を求める訴訟を起こした。
控訴審の裁判部は、「この事件の書籍は学問的な表現物と見なされ、被告が学問分野で通常許容される範囲を著しく逸脱した不正行為を行ったわけではない」と述べた。
また、「日本軍朝鮮人慰安婦を個々に特定可能な小規模の均一な特性を持つ集団として定義するのは難しく、用語の概念や適用範囲に応じて多様な解釈が可能だ」と付け加えた。
「意見の表明であっても人格権侵害に該当する」とする原告側の主張に対しても、裁判部は「この事件の記載部分は学問的・客観的な叙述と見られ、それによって原告がある程度感情的な影響を受けたとしても、その不利益と学問の自由を保障する憲法上の価値を比較すれば、被告が許容限度を超えて原告の人格権を侵害したとは見なしがたい」と説明した。
これとは別に、検察は2015年11月、パク教授を名誉毀損容疑で拘束起訴した。
この裁判は、1審でパク名誉教授に無罪が言い渡されたが、2審では彼女に罰金1000万ウォンが宣告された。
しかし韓国最高裁は2023年10月に原審を破棄し、無罪の趣旨で事件を2審に差し戻した。差し戻し審の裁判部は、学問的研究に基づく意見を軽率に名誉毀損と判断してはならないとして、パク教授に無罪を言い渡した。検察が再上告しなかったため、2024年4月に無罪判決が確定している。
いずれの裁判も「学問的な研究」と認められた結果だが、韓国における慰安婦問題は非常にセンシティブなテーマだ。そんな慰安婦被害者を「売春婦」などと表現すれば、猛烈に叩かれるのは必至だろう。
なぜパク教授は『帝国の慰安婦』という書籍を出したのだろうか。かつて、韓国メディアに以下のように語っている。
「これまで20余年間、(慰安婦)支援団体らは“日本政府に法的賠償と公式謝罪”を主張してきた。しかし、私が会った元慰安婦の大部分は、法的賠償が何かも知らなかった。私は多くの当事者が排除されたまま進行している支援団体らの方式を批判した。書籍を通じて、他の元慰安婦たちの声を伝えたかっただけだ」
パク教授が非難すべきとした慰安婦支援団体のなかには、実際に被害者への後援金を横領していた人物がいたことも明らかになっている。
昨年11月、韓国最高裁は詐欺・業務上横領など8つの容疑で起訴されたユン・ミヒャン元議員に対し、懲役1年6カ月、執行猶予3年を言い渡した原審判決を確定した。ユン・ミヒャン元議員は、慰安婦支援団体「正義記憶連帯」の理事長を務めていた人物だ。
いずれにしても、パク教授の勝訴は学問的自由の保障という観点で意義深いが、慰安婦問題をめぐる解釈の相違は韓国内外で引き続き議論を呼ぶことが予想される。
(文=サーチコリアニュース編集部O)
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