韓国で、小学生が新学期初日に担任教師へ「先生、可愛いです」と伝えた発言が“教権侵害”ではないという裁判所の判断が出た。裁判所は同発言が担任教師を当惑させる可能性はあるものの、性的屈辱感や嫌悪感を抱かせるものではないと判断した。
6月9日、法曹界によると、春川(チュンチョン)地裁行政第1部(キム・ビョンチョル部長判事)は、小学生A君側が原州(ウォンジュ)教育支援庁の教育長を相手取って提起した「学校でのボランティア処分取り消し訴訟」で、原告勝訴の判決を下した。
A君は今年1月、地域教権保護委員会から「校内ボランティア2時間」という懲戒処分を受けていた。
発端はA君の些細な発言だった。担任教師B氏の主張によると、小学5年生だったA君は昨年3月4日の始業式後、B氏に対し「先生、可愛いです。僕と付き合ってくれますか?」と発言したという。
これに対し、A君側は「先生、可愛いです」と発言したのみで、「僕と付き合ってくれますか?」と発言した事実はないと主張し、処分を不服として行政訴訟を起こした。
そして、生徒たちが愛情の表現として先生に「可愛いです」「カッコいいです」と言うのは極めて正常な範疇だと強調。「僕と結婚してください」や「恋愛の話をしてください」と言ったからといって、セクハラや教育活動の妨害だとする教師はいないという主張もあわせて提示した。
また、当時A君が満11歳にすぎず、新学期初日に先生に対する好感を示し、より多くの愛情を受けるためにした表現に過ぎないと主張。性的な意図で発言したのではなく、常識的に考えても、性的屈辱感や嫌悪感を与える行為ではないということを訴えた。
裁判所は、当時の目撃生徒による自筆の陳述書などを基に、A君が「僕と付き合ってくれますか?」と発言した事実を認めた。また、この発言が不適切であり、担任教師を当惑させる発言だったという点も確認した。
ただし、一般的かつ平均的な人の観点からして、男女間の肉体関係を前提とした発言であるとか、性的屈辱感あるいは嫌悪感を与える行為に該当するとみなすことは難しいと判断した。
また、A君の発言に「性的な意味」があると断定することも難しいと見なした。「A君が日常的に他の生徒にも性的な言動をしていたことを知って、これを保護者に知らせる必要があると考えた」というB氏の申告の経緯についても、裁判所は認めなかった。
裁判所は、B氏がA君を教育活動の侵害行為として申告した背景にも注目した。
というのも、A君は新学期の初めから学校内でいじめを受けていたのだ。A君とその両親はB氏に助けを求めたが、被害は次第に深刻になったという。にもかかわらず、B氏が十分な関心を示し、適切な対応を執らなかったと感じたとのことだ。
A君は言葉による暴力を超えて、暴行や性的暴力の被害まで受けることになったという。
このため、A君側は加害生徒たちに対して昨年9月、学校暴力としての通報とともに、強制わいせつの疑いで告訴した。その結果、一部の生徒は学校暴力によって懲戒を受け、他の一部の生徒は裁判所で少年保護処分を受けた。
この過程で、A君側は同年11月に、B氏に対しても児童虐待の容疑で告訴した。すると、B氏はA君の学期初めの発言を問題視し、後になって「教権侵害の生徒」として申告した。このような事情を、裁判所は納得しがたいと判断した。
裁判所は、地域教権保護委員会がA君の両親に下した「特別教育履修6時間」の処分も取り消すよう命じた。A君の両親が、学校いじめの被害問題によってB氏に細心の注意を求めたことが、教育活動を侵害する行為ではないと認めた格好だ。
裁判所は「両親の子どもに対する教育権」は憲法上の重要な基本権であり、子どもが学校生活で困難を抱えている状況を見つけた場合、担任教師にそれを知らせ、適切な解決策の準備を求める権利があると判示した。
A君の両親がB氏の対応をやや攻撃的に指摘した面はあるものの、B氏が取った問題解決行動や進行状況などを伝えていなかった事実、そして発言の経緯や文脈を考慮すると、不当な干渉とは言えないと判断した。
また、A君の両親による問題提起のやり方に多少過度な側面があったとしても、A君が経験した学校暴力や性的暴力の程度が決して軽くなかったこと、対立した期間も短くなかったこと、B氏が適切かつ正当な教育活動を行ったと見るのは難しいことを根拠に、教育権の侵害行為には当たらないという結論を下した。
(記事提供=時事ジャーナル)
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